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鳥谷と正田が交わした
一人前になるための約束。 

text by

永谷脩

永谷脩Osamu Nagatani

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photograph byKoji Asakura

posted2005/03/31 00:00

鳥谷と正田が交わした一人前になるための約束。<Number Web> photograph by Koji Asakura

 2年目を迎えた阪神の鳥谷敬。キャンプ、オープン戦を通じて、誰もがその成長を認めている。しかし、今岡誠、藤本敦士をコンバートしてまで、昨年2割5分1厘、3本塁打の選手に常時出場を約束した岡田彰布監督への風当たりが強いのも事実。鳥谷自身、そのことを十分に自覚している。

 岡田監督にすれば、先輩の野村徹前早大監督に「一人前にします」と頭を下げて獲った選手だけに、育てなければという思いも強い。だが、自分の入団時の経験から名前だけで起用される苦しみも理解していた。そこで、1年目の状況を受けて、秋季練習で鳥谷を鍛え上げることにした。臨時コーチに中西太を迎えたのもそのためだ。中西は若松勉や掛布雅之を育て、岡田の現役時代もよく知る存在。選手の乗せ上手としても知られている。

 一方、広島、近鉄で妥協しない鬼コーチとして名を馳せた正田耕三が打撃コーチとなり、飴と鞭の使い手が揃ったのだった。中西は鳥谷を「お前は天才だ。若松や掛布になかった飲み込みのよさがある。後は正田コーチを信じてついていけ」と勇気付けた。1年目に騒がれすぎ「どこかうしろめたさを感じて消極的になっていた」という鳥谷にとっては心に響く言葉だった。

 さらに正田は「いろいろ言われているのを知っているよ。半分以上は羨望で、その他もやっかみさ。黙らすには結果を出すしかない」と、積極的に行動して存在をアピールするようにアドバイス。その上で「お前だけに苦しい思いをさせない。一人前になるまで夜の街には出るな。俺もキッパリやめる」という約束までした。

 選手は苦労をともにしてくれるコーチには素直に心を開く。今はなき近鉄には、そんな師弟関係が受け継がれていた。佐々木恭介と金村義明、水谷実雄と中村紀洋(現ドジャース)の間にも、同じようなことがあった。そして、結果が出た時、彼らは全てを忘れて飲み明かしたのだった。

 正田の約束は「俺の実家は和歌山駅前の有名なそば屋だ。お前が一人前になった時、俺の手打ちそばでお祝いしてやる」というもの。その実現を目指しての、二人の練習は続いている。積極的に打ちに行く姿勢が出てきたが、正田の評価は「まだまだ」。

 正田がそばを打つ日まで鳥谷の夜の街への外出禁止は続く。

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