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セーブ記録を目前にしたホフマンの存在感。 

text by

出村義和

出村義和Yoshikazu Demura

PROFILE

photograph byYukihito Taguchi

posted2006/09/14 00:00

セーブ記録を目前にしたホフマンの存在感。<Number Web> photograph by Yukihito Taguchi

 クローザーとして10年を超えるキャリアが醸し出すのだろうか。近づく者を威圧するような雰囲気が漂う。眼光はあくまでも鋭い。パドレスのトレバー・ホフマンは8月26日のロッキーズ戦で今季のセーブを34に伸ばし、あと9セーブで、リー・スミスの持つ通算478セーブを抜き、セーブ王の座に登りつめる。

 「名投手たちが並ぶリストのトップに自分の名前が載るのは名誉なことだけど、野球はチームスポーツ。個人記録より、チームとしてのゴールに到達することに意味を感じる」と、38歳のホフマンは静かに語る。気負いのない口調が、かえって説得力を生む。

 10歳違いの次兄グレン(現パドレスコーチ)たちに混じって野球を覚えたときから、『野球は個人の成績よりもチームが優先されるスポーツ』と教育されてきた。

 「確かに、チームが勝てば私にセーブが付く。でも、それはしっかり守ってくれた野手がいてこそ初めて記録されるもの」

 プロとしてのスタートは遊撃手。マイナー時代にスライダーが打てず投手に転向したという、ユニークな球歴の持ち主だ。当初は90マイル台半ばの速球を武器にするパワー投手。伝家の宝刀チェンジアップをマスターし、主体となる球種として本格的に投げる現在のようになったのは、'95年に肩を痛め、球速が 80マイル台に落ちてしまったからだ。

 「クローザーになるには真似のできない決め球が必要だと感じ、'93年ごろからチェンジアップを覚え始めた。そして、肩を壊してからは遅くなったボールをいかに速くみせるか、緻密な制球力を身につけるかということに真剣に取り組んだ」

 所属がレッズからマーリンズ、パドレスと変わっていく中で、ホフマンはクローザーとして確実に成長を遂げ、剛球クローザー全盛時代になった現在も、ユニークな遅球クローザーとして異彩を放っているのだ。

 「今年は素晴らしい新人の投手たちが出てきて、メディアもヤングウェーブと持ち上げているけれど、彼らの真価が問われるのはこれからだよ。そのうち、この世界で長くやることの大変さを知ることになるだろう」

 口調は相変わらず静かだが、セーブ王に相応しい強烈なプライドを感じさせてフィールドに出ていった。

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