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初登板初勝利の山口俊。父から学んだプロ魂。 

text by

永谷脩

永谷脩Osamu Nagatani

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posted2006/07/24 00:00

 「ライオンに追われたウサギが肉離れをしますか? 準備が足りないのです」と言ったのはサッカーのオシム監督だが、最近、野球界にも同じ問題がある。技術はあるものの、プロ入り前にきちんと走り込みをしていないので、怪我で潰れる選手が多い。逆に言えば、きちんと下半身を鍛えてきた新人選手は、それだけで目立つ。

 6月29日、巨人を相手に初登板初勝利をあげた横浜の山口俊は、その一人だ。父親は元前頭四枚目の谷嵐。幼い頃から見よう見まねで四股を踏み、股割りで鍛えてきた。入団早々、下半身の充実ぶりを見た谷川哲也・二軍コーチは、「高卒ルーキーのなかで一番早く上に行くだろう」と予言していた。一軍昇格の決め手となったのは6月15日のインボイス戦だ。7回を1安打で抑える好投に、相手の渡辺久信監督から「松坂(大輔)並みに足腰がしっかりしている」と太鼓判を押された。

 牛島和彦監督は「巨人戦先発で野球人生をスタートすれば、特別なものになるはず」と考えた。山口は期待に応え、5回2死まで1人の走者も許さない。結局、6イニングを2安打1失点。高卒新人が巨人戦で初登板初勝利をあげたのは、ノーヒットノーランを達成した近藤真一(現中日コーチ)以来だ。怖い者知らずでどんどんストライクを取りに行く姿も、19年前のあの時を思い起こさせた。

 しかしその後の近藤は、肩と肘を痛め、アメリカで手術をした。たまたま帰国の便が同じで、成田空港で見た涙の痕が忘れられない。その頃から中日では「土台ができていないうちから投げさせるとどこかを痛めてしまう」と、新人にまず下半身の強化を課しているという。

 横須賀の二軍練習場で、夕食までの自由時間、山口はよくランニングをしていた。寮長の稲川誠は「時間通りきちんと三度の食事をするし、礼儀も正しい。父親にプロの厳しさを叩き込まれているからでしょう」と、褒めていた。楽天・野村克也監督が「最近の選手は朝めしを食べに来ん」と嘆いていたことを思い出す。

 しっかりと食事を摂り、足腰を強化し続けていれば、怪我に泣くこともないはずだ。プロ入りした時、父が息子に送った言葉は「プロはやるか、やらないか」だったという。

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