車いすテニスでシングルス世界ランク1位の国枝慎吾が、9月18日から米サンディエゴで行われた車いすテニス世界ツアーの全米オープンに優勝。史上初めて年間グランドスラム(4大大会全制覇)を達成する快挙を成し遂げた。国枝は、初戦から決勝までの5試合で、失ったゲームがわずか7という圧倒的なプレーを披露した。車いす操作はもちろんのこと、力強いスピンと滑るスライスを打ち分けるストローク、サーブやリターンからネットを奪う技術など、現在の世界の車いすテニス界で、飛び抜けた強さを誇る。
車いすテニスの世界ツアーは、'92年に11大会で始まり、今年は、32カ国で126大会が行われている。一般のテニスと同じように、賞金もあり、世界ランクも毎週発表される。世界のテニス界では、身障者のスポーツというカテゴリーより、一般の単複と同じような種目の一つという扱いだ。運営統括団体も、一般のテニスと同じ国際テニス連盟(ITF)傘下にあり、他の身障者スポーツとは一線を画する。ルールは2バウンドまでOK。それ以外は、一般テニスと全く同じで、ツアーのハードさは優るとも劣らない。
その国枝も、今年の春にはスランプに陥った。念願だった世界1位となり目標を見失ったのだ。「テニスが楽しくなかった。でも、自分の腕をどれだけ磨けるかを考えたら、気が楽になった」。成績や世界ランクを気にすることなく、自分のテクニックを向上させることだけに集中し、スランプを乗り切った。それからの国枝は破竹の勢いで勝利を積み上げた。車いすテニスの4大大会は、全豪、全英(ウィンブルドンではない)、全米、そして日本のジャパンオープン。その4つを今年すべて制し、名実ともに世界王者に君臨している。しかし、国枝には、もっと大きな目標がある。来年の北京パラリンピックだ。前回のアテネでは先輩の斎田悟司と組んだダブルスで金メダルを獲得した。「今度こそ、北京では単複の金メダルを取りたい。4大大会全制覇はあくまでそのステップです」。
一般の王者フェデラーは、日本男子テニスの低迷について尋ねられて、次のように答えたことがある。「日本には国枝がいるじゃないか」。国枝は、日本が誇る車いすテニス界のフェデラーなのだ。
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