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IOCスキャンダルを忘れてはいけない。 

text by

藤山健二

藤山健二Kenji Fujiyama

PROFILE

posted2004/08/26 00:00

 五輪開幕直前には必ず現地で国際オリンピック委員会(IOC)の理事会と総会が開かれる。これまでは大会の盛り上げに配慮して重要な問題は取り上げないのが慣例だったが、今回はロゲ会長がアテネ入りする直前にスキャンダルが発覚。一躍注目されることになってしまった。

 事の起こりは8月4日に英国のBBCが放送した報道番組だった。タイトルの「五輪を買う」からも分かるように、内容は2012年の五輪開催地に立候補しているロンドンへの集票工作。英企業の社員を装ったBBCの記者が、有力エージェントのゴラン・タカチ氏を通じてブルガリアのソフィアで同国IOC委員のイワン・スラフコフ氏と接触。同氏は隠しカメラが仕掛けられているとも知らずに、ニセ社員の目的が票の買収だということを認識しているとし「(ロンドンに投票するための)交渉は可能だ」と発言した。別のエージェントは「1票について20万ユーロ(約2700万円)が必要」と具体的な買収金額まで提示。更にタカチ氏はスラフコフ氏がブルガリアのオリンピック委員会会長であることを説明し、他のIOC関係者への工作も可能だとした。BBCは番組の中で'02年ソルトレークシティー冬季五輪招致の際にも買収が行われた例を挙げ、「IOCの腐敗体質は変わっていない」と厳しく批判した。

 BBCの「おとり取材」については批判もあるだろう。だが、手法はどうであれ、現職のIOC委員が買収工作に積極的に応じる姿勢を見せた意味は極めて重い。タカチ氏らは「買収されたふりをしただけ」と反論したが、それで納得する者はおそらくいないだろう。IOCでは倫理規定違反として理事会で即座にスラフコフ氏を資格停止処分とし、あらためて綱紀粛正を強調した。

 ロゲ会長は「許す余地はない」と厳しい表情で会見に臨んだが、毎回繰り返される買収工作にはただただ呆れるばかりだ。地道に招致活動を続けている各都市の関係者の怒りと落胆は言葉では言い表せないに違いない。

 アテネでは、毎日、熱戦が繰り広げられている。だが、この華やかな大会の陰で、IOCの歴史に大きな汚点が残されたことを、われわれは忘れてはならない。IOCは大会後もきちんと調査を続行し、その結果を世界にきちんと公表するべきだろう。

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