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ア・リーグ月間新人賞 岡島秀樹、好調の理由。 

text by

石田雄太

石田雄太Yuta Ishida

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posted2007/06/14 00:00

 岡島秀樹の二面性は、あまり知られていないように思う。

 優しい顔はお馴染みでも、「ナメたら、背中通したるぞ」と言い放つ強面の一面も持っている。細かいところに気を遣うようでいて、「そんなん、別にどっちでもいいんですよ」と笑い飛ばす適当なところもある。

 4月のア・リーグ月間新人賞を受賞して「ホントに僕でいいんですか」と微笑んだり、「僕はシャドウでいきたい、ヒーローは大輔君でいいと思います」と謙虚に語ったりする姿から、「岡島っていい人だね」という声をあちこちで耳にするようになった。いや、もちろんいい人には違いないのだが、いい人と言われるだけの選手が、メジャーの舞台であんなに図太いピッチングを続けられるはずがない。岡島が合わせ持っている図太さと細やかさ──しかも意外なところが図太くて、意外なところで細やかだったりするからこそ、今の傑出した結果があるように思う。

 まず、相変わらず図太いなと感心させられたのが、メジャーリーガーでありながら、メジャーのバッターに対する知識のなさだ。確かに岡島は日本ハムでFA取得を念頭に置いたとき、最初は巨人を除く在京球団への移籍を希望していた。結果的にレッドソックスの方が彼を高く評価したため、岡島は海を渡る決断を下したのだが、彼はメジャーへの憧れといった類の意識をまったく持っていなかった。だからなのか、どのチームがア・リーグで、どこがナ・リーグなのかも知らなかったし、メジャーで対峙する相手の選手の名前もほとんど知らない。だからこそいいんですよ、と岡島はケロッと言う。

 「だって、メジャーで最初にホームランを打たれたのが8番バッターですからね。下位でも一発があるんですから、息が抜けないじゃないですか。僕、日本にいたときから外国人の選手にはけっこうカモられていたんでいつも全力だったんですけど、こっちに来たらみんな外国人でしょ(苦笑)。たまに日本人だと思えば、松井さんだし(笑)。気を抜くバッターが一人もいないんですから、常に目一杯でいくしかないんですよ」

 4番に座る“超”のつくスーパースターでも下位を打つマイナーあがりの若造でも、なんと大胆なことに知らぬが仏だというのだ。その結果、相手が誰であれ丁寧に低めを狙い、ほんのわずかだけでもボールを動かしてバットを振らせようとする繊細なピッチングを貫いていることが、凡打の山を築く要因となっている。

 その原点にあるのが、メジャーデビューを果たした、その初球だ。

 アウトローいっぱいに決まったはずのフォーシームを、ロイヤルズの8番バッター、ジョン・バックにセンターへオーバーフェンスされたトラウマ──そんな屈辱を、岡島は必死に生かそうとしているのである。

 「あのボールは今までも、これからも絶対に投げません。あの球を投げない限り、長打はないと思ってるんです。だから、あの近辺のボールはシュート回転させたりスライダーをかけたり、少し沈ませたり、ちょっとでも動かすようにしています」

 もちろん、そういった妥協を許さない創意工夫は日本にいたときから変わらない。さらに言えば、岡島は独特のフォームと目新しさだけで今の数字を残しているわけでもない。工夫を重ねた大胆かつ繊細なピッチングは、今も昔も岡島を支え続けている。そんな岡島の持ち味をきちんと評価できたのが、レッドソックスだけだったというわけだ。

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岡島秀樹
ボストン・レッドソックス

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