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わずか2カ月の間にボンズが見せたふたつの顔 

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菊地慶剛

菊地慶剛Yoshitaka Kikuchi

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photograph byGetty Images/AFLO

posted2007/06/11 00:00

わずか2カ月の間にボンズが見せたふたつの顔<Number Web> photograph by Getty Images/AFLO

 ハンク・アーロン氏が築いた通算本塁打記録の更新を31年ぶりに狙っているバリー・ボンズ選手が、開幕から2カ月の間に、まったく相反する2つの“顔”を見せた。

 その1つは、往年のボンズ選手のそれ。開幕から1カ月はまさに彼の復活を印象づけるものだった。4月の月間成績は、打率.356で8本塁打、17打点。過去2年間悩まされていたヒザの故障も完治し、記録更新は時間の問題だろうと誰しもが考えたほど、最高の滑り出しを見せたのだ。

 「今年自分にとって最高だったことは、健康な状態で開幕を迎えられたこと。現在は(故障前の)2年半前にできたことができるようになった。以前より速く動けるようになったし、身体の状態も最高だと思う。バッティングにとってヒザは大きな役割を果たしている部分。これまでは思い通りのスイングができていなかった」

 4月に報道陣の質問に応じた際、ボンズ選手の表情は明るかった。本人の言葉通り、満足のいく体調でシーズン開幕を迎えていたからだろう。何より成績がすべてを物語っている。

 ところが5月に入った途端、成績が急降下、もう一つの“顔”が姿を現した。5月の月間成績は打率.194で4本塁打、8打点。彼の調子に合わせて、4月26日には地区首位タイに立ったチームも、首位争いから後退していった。

 「本塁打を打てたからといって安堵できるものではない。チームが勝って初めて安堵できるんだ。本塁打だけでなく、チームが勝つためにいろいろな小さなことをやっていくことが大切だ。体調面は問題ない。確かに疲れたり、身体が鈍かったりすることはあるが、それは野球をやっている限り仕方がないことだ」

 5月27日のロッキーズ戦で、45打席ぶりに本塁打を放った時も体調面に関して不安を口にすることはなかった。しかしブルース・ボウチー監督がその日の試合後に「今までよりもいいかたちでバットが振れていたようだ」と気にかけるほど、最近のボンズ選手は、4月のようなスイングができていなかった。

 そんな矢先の6月5日、アクシデントが起こった。ボンズ選手が両足の不調を理由に先発から外れたのだ。

 「今日は随分良くなった。故障ではないのだが、ヒザ、スネ、足首がとにかく痛かった。足がむくんでソックスの痕が残るほどだった。ニューヨーク遠征で1日休んでも、回復しなかった。もう自分も若くはないということだ。もちろん足の異常は、野球をする上でいろいろな部分で影響を及ぼすものだ」

 欠場した翌6日に、報道陣に応じたボンズ選手は、今年7月で43歳という年齢による体調維持の難しさを明らかにした。

 「自分は試合後にトレーナー室に行くのが嫌いだった。他の選手が終わるのを待たないといけないし、これまで定期的にアイシングもしたことがない。しかし今回トレーナーから毎試合後にアイシングをしないといけないと言われた。昨夜もずっとマッサージを受けていたし、今後は自分の体調を維持するため違ったことをしていかねばならないだろう」

 開幕直前のコラムで、40歳以上のオッさん選手が急増している話題を取り上げた。しかし同じ40歳を超える選手でも、体調管理の面では投手と野手ではかなり違ってくる。それを証明するように、これだけ高齢選手が増えながら、実はボンズ選手と同じ42歳、もしくは43歳で放った最多本塁打記録というのは、レッドソックス時代のカールトン・フィスク選手が1990年(42歳時)と1991年(43歳時)に樹立した18本で、それが破られないまま現在に至っている。元々フィスク選手は長距離打者ではなく、この2シーズンに137、134試合とコンスタントに出場できたからこそ達成できた記録だといえる。

 さらに42歳での最多出場試合数となると、フィリーズ時代のピート・ローズ選手の151試合で、43歳が前述のフィスク選手の134試合。逆に考えれば、現在のボンズ選手も年間30試合程度欠場しても、決しておかしくはないということだ。6月6日時点で出場試合数は57試合中52試合でチーム3位。やはり疲労が蓄積しなかったといえば嘘になるだろう。

 「3000本安打には興味がある。ウィリー(・メイズ=ボンズ選手の名付け親)が達成しているからね。挑戦は大好きだ。彼の記録(3283本)には届かないだろうけど、少しでも近づきたい」

 これは4月の好調時のコメントなのだが、6月6日現在で2878本のボンズ選手が、今季中の3000本達成を視野に入れているとは思えない。個人的には来季以降の現役続行への意思表示だと捉えているが、残りシーズン、その心境は変化するだろうか。

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