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日本勢は世界水泳で
世界新を出せるのか?
~入江陵介ら、注目の競泳陣~ 

text by

松原孝臣

松原孝臣Takaomi Matsubara

PROFILE

photograph byTakao Fujita

posted2009/07/22 11:30

入江は直前の大会で複数の水着を試し、準備に抜かりはない

入江は直前の大会で複数の水着を試し、準備に抜かりはない

 今月17日からイタリア・ローマで開かれる水泳世界選手権ではシンクロナイズドスイミング、水球、飛込み、オープンウォータースイミング、競泳が実施される。うち、競泳種目は26日にはじまる。北京五輪から1年を経た今大会は、次のロンドン五輪へ向けた試金石の場である。

 選手にとって、五輪はひとつの節目だ。4年間追い続けた舞台が幕を閉じると、競技生活を続けるか、身を退くか進路を考えざるをえない。五輪出場を逃がした選手にとっては、再スタートの時期である。つまり、五輪翌年に行なわれる大会は、3年後までを見通すことのできる選手が現れる機会なのだ。例えば、2000年のシドニー五輪翌年の大会では、平泳ぎ200mで北島康介が五輪、世界選手権を通じて初のメダルとなる銅を獲得し、アテネ五輪の次の年の2005年には、松田丈志がバタフライ200mで銀メダルを獲得している。その後の彼らの活躍は周知のことだろう。

公認水着でも世界記録に0秒15差。入江の泳ぎは本物だ。

 今年の世界選手権で注目すべき選手といえば、まずは背泳ぎの入江陵介をあげなければならない。

 今シーズン、競泳は水着騒動に揺れたが、渦中にいたのが入江である。5月の日豪対抗で出した世界新記録は着用していた水着が公認されなかったため、結局、幻と終わった。だが、見逃してはいけないのは、水着の能力ばかりが彼のタイムの裏付けではないということだ。北京五輪の背泳ぎ200mで5位と不本意な結果に終わった入江は、激闘の疲労をものともせず、帰国してすぐ学生選手権に出場。以後、今年4月の日本選手権まで、長・短水路をあわせ、実に6度日本記録を更新している。

 6月のジャパンオープンでも、公認されている水着で本来の世界記録にわずか0秒15に迫るタイムをたたき出した。

 北京五輪後の泳ぎや、騒動の中にあっての態度からしても、ひとまわり成長したことを感じさせる。今春、入江が口にした言葉がある。

「今はプレッシャーを力にかえられます。まわりから期待されているのも分かっていますし、しっかりしないといけないと思っています」

 代表の柱にならなければ、という自覚が、成長を促したのである。

入江だけじゃない! 注目の日本競泳陣。

 注目すべきは入江ばかりではない。背泳ぎの古賀淳也は、もともと50mには定評があったが、距離が伸びると難のある選手だった。だが今春の日本選手権では100mで52秒87と、世界歴代3位で初優勝。

 古賀は北京五輪出場を逃がしたあと、一時競泳に集中できなくなっていた。その姿に、北島やテニスのクルム伊達公子もサポートする白石宏トレーナーが「そんなことではこれから先何をやってもだめだ」と一喝。

「それで目が覚めました」

 ついに距離の壁を破り、100mで初めて世界選手権代表となった。

 女子では、平泳ぎに楽しみな選手がそろった。北京五輪に出場し決勝進出を果たした金藤理絵は、日本選手権の200mで従来の日本記録を1秒近く縮める驚異的な新記録を出して優勝。北京五輪出場を逃がした田村菜々香は100m優勝、200m2位で代表入りし、昨年の雪辱を期す。100m2位で世界選手権初出場となる野瀬瞳もまた、メンタルの強さをうかがわせる。どのような泳ぎをみせるだろうか。

 北島康介が今季休養し、絶対的なエースといえる存在がいない中、誰が台頭するのか。世界選手権での泳ぎがロンドン五輪への第一歩となる。

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