SCORE CARDBACK NUMBER

無敗のホープ対決が
生み出した名勝負。
~日本バンタム級、山中vs.岩佐~ 

text by

前田衷

前田衷Makoto Maeda

PROFILE

photograph byBOXING BEAT

posted2011/03/30 06:00

無敗のホープ対決が生み出した名勝負。~日本バンタム級、山中vs.岩佐~<Number Web> photograph by BOXING BEAT

 好カードが必ずしも好ファイトとならないのがボクシングだが、この一戦は期待以上の内容で後楽園ホールの超満員のファンを魅了した。3月5日、チャンピオン・山中慎介が新鋭・岩佐亮佑の挑戦を10回TKOで退けた日本バンタム級タイトルマッチ。今季のベスト、いやチャンピオンカーニバル32回の歴史に残る名勝負だった。

 両サウスポーが鋭いブローを応酬し、終始緊迫した攻防を展開した。強打の山中に対し、岩佐が足を使ったアウトボクシングではなく前に出て果敢に仕掛けたのは意外だった。後半、山中の強いプレスに押されたのはパワーと経験の差だろうが、プロ9戦目でここまでレベルの高い試合を見せた岩佐もただ者ではない。

 中盤以降、山中が徐々に挽回して優位に立った。そのまま判定での決着でもファンは十分満足しただろうが、最終回に劇的な結末が待っていた。わずかに疲労の色を見せた岩佐の顔面に山中の左強打が直撃。後退したところにすかさず的確な連打を浴びせた。主審が試合を止めたのは適切だった。

山中が希望する亀田興毅との対戦は実現するのか?

 防御技術に定評のあった岩佐だが、山中のベストショットにも耐えた「鉄のアゴ」も驚異的だった。3人の世界王者を含め7人の現役王者を擁する斯界の巨人・帝拳ジムの厚い壁にはね返されはしたが、岩佐とセレスジムの挑戦は見ていて清々しささえ感じたものだ。

 日本ではこの種の好カードはなかなか実現しない。ホープ同士の潰し合いを避けたいとの思惑が働くからだが、この日の試合では、勝った山中はもちろん、敗者の岩佐も大いに評価を上げた。

「予想以上にいい選手。セレス(小林)会長が挑戦させたがったのも無理はない」と帝拳の本田明彦会長は感心した。岩佐は「チャンピオンは強かった」と認めつつも「またひとつ強くなれた気がしました」。負けた直後にこんなセリフを吐いた選手がいただろうか。 これで14勝8連続KO(通算10KO)をマークした山中は、長谷川穂積が転級していなくなったバンタム級に新たな世界ホープの出現を強烈に印象づけた。

 試合後、山中は「亀田(興毅)君とやりたい」と野望を口にした。実現は簡単ではないが、ファンが今すぐにも見たい黄金カードが誕生したのは間違いない。

■関連コラム► 無敗のサウスポー同士が激突する注目の一戦。~3月5日は「聖地」後楽園ホールへ~
► 史上初3階級制覇と言うけれど……。亀田興毅を手放しで祝福できぬ理由。

関連キーワード
山中慎介
岩佐亮佑

ページトップ