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地上最強の男ヒョードルが
連敗を喫した真の理由。 

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布施鋼治

布施鋼治Koji Fuse

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photograph bySusumu Nagao

posted2011/02/25 06:00

地上最強の男ヒョードルが連敗を喫した真の理由。<Number Web> photograph by Susumu Nagao

顔面にパンチを受け続け、ヒョードル(下)の右目は大きく腫れ上がってしまっていた

 氷の皇帝時代の終焉――。2月12日(現地時間)、アメリカ・ニュージャージー州で行なわれたストライクフォース・ワールドGPヘビー級トーナメント準々決勝。優勝候補だったエメリヤーエンコ・ヒョードルが“伏兵”アントニオ・シウバに2R終了時TKO負けを喫した。昨年6月のファブリシオ・ヴェウドゥム戦での一本負けに続いての初の連敗だ。試合後、ヒョードルは引退を示唆した。

「おそらくこれが最後。潮時だと思う」

 ヒョードルの敗因として体格差をあげる関係者は多い。前日計量時、両者の体重差は約16kgだったが、シウバは決戦までに10kg以上増量したという話もある。実際ケージの中で対峙した両者の体格差は歴然としており、30kg近い体重差があっても不思議ではなかった。

 過去にヒョードルはチェ・ホンマン、セーム・シュルトといったスーパーヘビー級と闘って勝利を収めているのに、今回はなぜ体重差がネックになったのか。それはホンマンやシュルトが寝技のスペシャリストではなかったからだろう。対照的にシウバは柔術出身で押さえ込む技術は天下一品。ヒョードルに決定的なダメージを与えたのは、マウントポジションを奪ってからのパンチの連打だった。

PRIDE時代と比べ安定性に欠ける試合ばかりだった昨今。

 それだけではない。8カ月という長いブランクのせいかもしれないが、スタンドのボクシングやテイクダウンでもいいところがなかった。中でも相手の攻撃に対する反応の遅さには目を覆うしかなかった。以前なら、もっとパンチのディフェンスがうまかったはずだ。かつてヒョードルの売りのひとつだった猛獣が獲物を捕獲するかのような動き(藤田和之を仕留めたシーンを思い出してほしい)が、影を潜めていたことも気になった。

 いくつもの格闘技団体を渡り歩きながら連勝を重ねることで、ヒョードルは巨額の富を手にした。同時に長らく主戦場だった日本だけではなく、MMAの本場アメリカでも“地上最強の男”として評価されるようになった。だが、'09年以降の試合内容は決して良くない。PRIDE時代と比べると、安定性に欠ける試合ばかりなのだ。ハングリーに代わるエネルギー源を見つけられなかったのか。顔面を大きく腫らした氷の皇帝など見たくない。もうこれで十分なのではないか。

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