ぼくらのプロレス(再)入門BACK NUMBER
根室でしか見られないプロレスラー。
アンドレザ・ジャイアントパンダ!
posted2018/03/13 10:30
text by
堀江ガンツGantz Horie
photograph by
Gantz Horie
いま、プロレス界を巨大なパンダが席巻している。
昨年夏、本土最東端の街・北海道根室市のアマチュアプロレス団体「新根室プロレス」に突如現れたアンドレザ・ジャイアントパンダがそれだ。
愛らしい表情とは裏腹に、身長3mというプロレス史上最大級の巨体で暴れまわるその姿は、'70年代から'90年代初頭にかけて活躍した、本家“大巨人”アンドレ・ザ・ジャイアントばりのインパクトで、試合動画がネット上にアップされると、Twitterを通じて瞬く間に拡散。
一般紙やテレビでも取り上げられるフィーバーぶりとなり、今年1月には、トップレスラーが一堂に顔を揃える、東京スポーツ主催の「プロレス大賞」授賞式にもゲスト出演。ここでも話題を独占した。
アンドレザが所属する新根室プロレスは、プロレス団体ではなく、アマチュアプロレス団体。普段は、漁師、酪農家、自動車学校の教官など、それぞれ別の仕事に励む社会人たちが、年に3~4回、地元のお祭りなどで趣味でプロレスを披露する、いわば大人の学生プロレスだ。
当然、それまで試合結果がスポーツ紙はおろか、プロレス誌に掲載されることもなかったが、ネットを通じて突如ブレイクを果たすというところが、いかにも現代的だ。また、ただただプロレスが好きで続けてきたことが、ある日突然脚光を浴びるその姿は寓話のようでもある。
元はただの同好会が。
なんせ、新根室プロレスの前身は、'97年にスタートした「根室プロレス同好会」。当初は、根室という地方都市のプロレスファンが集まり、一緒にプロレスのビデオを見たり、プロレスを語り合ったり、たまにプロレスごっこをやったりするサークルだったのだ。
それが北海道のプロレス団体「北都プロレス」が地元・根室で興行を打った際にゲスト出場させてもらったことがきっかけで、「自分たちもプロレスがやってみたい」という気持ちに火がついてしまい、ネットオークションに100万円で出品されていたプロレス用のリングを、仲間内でお金を出し合って落札。
そして、プロレスのビデオを見ながら、プロレスラーの動きを研究し、落札したリングで日々練習を重ね、'06年に地元神社のお祭りでアマチュアプロレス団体として旗揚げした。