球道雑記BACK NUMBER
ロッテ投手陣で最多登板の33歳。
大谷智久の憧れは先輩・小宮山悟。
posted2018/03/12 07:00
text by
永田遼太郎Ryotaro Nagata
photograph by
Nanae Suzuki
「野球人である前に、イチ社会人たれ」という言葉をよく耳にする。
大半の野球人は、グラブをはめている時間よりグラブを置いてからの時間の方が長いことから、プレイヤーでいるうちに生活習慣、生活態度を改め、一般社会に出ても恥ずかしくない知識や作法を身につけよう、という意図で発生した言葉だ。そして千葉ロッテ・大谷智久と接すると、彼こそがその模範たる人物の1人ではないかと思えてくる。
社会人野球のトヨタ自動車から、千葉ロッテに入団して今年9年目。
私生活で派手に散財することもなければ、オフの日は自宅で家族とゆっくり過ごすのが一番なんだと言う。試合前夜はお酒を控えて、野球道具や自分の体のケアなど翌日の準備を万全にしてから床に就き、その姿勢は多くの後輩たちにも強い影響を与えている。
坊主頭で顎に薄らと髭をたくわえた特徴的な風貌だが、取材陣、スタッフ、ファンへの対応も良く、その見かけからは想像もつかないくらい物腰が柔らかい人格者である。
そんな彼が今年2月に33歳の誕生日を迎えたのだが、そのことに話を向けると彼は苦笑いを浮かべながらこう言った。
「とは言っても僕だってまだ若いですからね」
怪我をしているくらいがちょうど良い?
昨年は開幕前に体調面の不安を口にしていたが、日々のケアでそれを乗り越え、終わってみればチーム最多の55試合に登板して、自身の仕事を全うした。
「(昨年と比べると)今年は体の状態が凄く良いんですよ。まず怪我の不安が今のところ全くないのがひとつ。多少、体が張ってくれば不安も出てくるんでしょうけど、昨年と今年を比べたら全然そこが違うので、(積極的に)動けている部分はあります。
ただ、調子が良いからと言ってあんまり飛ばし過ぎないように、そこは制御しながら自分の体とも相談してやろうと。僕はどうしても、やれたらやっちゃうタイプなので。案外、怪我をしているくらいがちょうど良いのかもしれないですけどね」
プロ8年間で293試合に登板。通算300試合登板を目前に控えた右腕は、最後にそんな冗談も加えるほどに万全の状態で今季を迎えた。