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大きな心と、大きな投球フォームで
大谷翔平は2つの「壁」を越えていく。
posted2018/03/01 17:30
text by
笹田幸嗣Koji Sasada
photograph by
Getty Images
「しっかりとマウンドとボールに対応していくことが実戦のレベルの中で一番。
まずは自分が状態を上げていくことが一番。
その先に打者への対応が出てくると思う。前回の登板の反省を生かしてやりたい」
「一番」──。
3月2日に行われるブルワーズとの練習試合登板に向け、その抱負を問われたときの言葉だった。この言葉に『投手・大谷』の現状がよく表われている。
語り尽くされた言葉がある。
――日本人投手にとって、メジャーの滑りやすい公式球と傾斜がきつく粘土質の固い土のマウンドへの適応は時間がかかる──。
肩、肘への負担増で故障の可能性が高くなる。
滑る、とはリリースの際にボールが滑るだけではない。
投手が最初にグリップを失うのはテークバックからトップを作り上げる際だ。投球フォームの中で腕が急激に加速度を増すのが、この瞬間だからだ。
6年前、マリナーズ1年目のスプリングトレーニングで岩隈久志は「テークバックの時にボールが飛んでいくかと思った」と、目を丸くして言った。
テークバックでボールが抜けそうになると咄嗟の反応としてボールを必要以上に強く握ってしまう。そして、加速度も緩めてしまう。まさに自然な流れだ。
十分なトップを作りきれないまま投球するため、タイミングが狂い、安定したリリースポイントは失われる。結果、力で無理矢理に投げに行くため、肩、肘への負担が増し、それが故障の可能性を少しずつ高めていく──。
この一連の「流れ」は、福岡ソフトバンクホークスの工藤公康監督から聞いたものだ。