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人間の体の中身は左右対称ではない。
菊池雄星が始めた「左特有の投げ方」。

posted2017/12/04 08:00

 
人間の体の中身は左右対称ではない。菊池雄星が始めた「左特有の投げ方」。<Number Web> photograph by Kyodo News

同じ投手でも、利き腕が違えば“理想のフォーム”も違う。菊池の取り組みは、サウスポーにとって大きなヒントとなる。

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氏原英明

氏原英明Hideaki Ujihara

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Kyodo News

 プロ野球における大型左腕の伸び悩みが顕著だ。

 180cmを優に超え、アマチュア時代には150km近い球速を出していた選手が、プロ入り後なぜか球速が落ちていくケースが多い。

 球速ランキングを見ても上位は右投手ばかりで、左投手だと今季158kmをマークした菊池雄星(西武)くらいしか見当たらない。

 そんな育成が難しい大型左腕の中で、なぜ菊池は着実に成長しているのか。そのヒントを、彼の取り組みから探りたい。

 実は菊池の球速は、今も伸びている。2年前に157kmを計測したが、26歳になった今季、自己最速を更新した。彼が今もなお進化中であることを示す数字だ。

以前から「左と右」の感覚の違いを認識していた。

 持続的な成長の陰にはピッチングコーチ・土肥義弘の存在がある。逐一菊池の投球をチェックし、ともにフォームを作り上げる。2人の共同作業がもたらした影響は計り知れない。

 2人の信頼関係はもちろん素晴らしいものだが、同時に浮かんだのは「左腕の悩みは左腕が一番分かるのでは?」「左腕同士でしかわかりあえない悩みがあるのでは」という素朴な疑問だ。

 菊池は以前から、左投手と右投手で感覚の違いがあると認識していた。フォームひとつとっても、お手本として提示されたのが右投手であると、菊池にとってはしっくりこないこともあったという。それが、同じ左腕だった土肥コーチの指導を受けることで整理された。

 それに加えて、菊池は昨オフからコンディショニング担当の新トレーナーとも契約している。菊池を担当する根城祐介さんは全米協会認定アスレティックトレーナー(ATC)、NSCA認定ストレングス&コンディショニングスペシャリスト(CSCS)などの資格を持つ体の専門家だ。

 またPRI(Postural Restoration Institute)理論というMLBやNBAでも採り入れられている新種のトレーニング法に精通。指導者としての認定も受けている。この理論が左投手と右投手の違いに頭を悩ませていた菊池にとって、積年の課題を解決するものだった。

 PRI理論とは、人間は左右非対称の身体であるというところに注目し、非対称であるから使われやすい筋肉と使われにくい筋肉が存在することを認識する。そのうえで、使いすぎている部分の抑制と使われていない部分の活性化を行う。

【次ページ】 頭にインプットされていない動作を活性化する。

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