猛牛のささやきBACK NUMBER
今も右目の横には傷跡が……。
オリ・小林慶祐が目指す復活の道。
posted2017/11/15 10:30
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph by
Kyodo News
フェニックス・リーグが終盤戦に入った10月24日の千葉ロッテ戦で、オリックスのルーキー小林慶祐がプロで初めての先発マウンドに上がった。
初回こそ連打と2つの四球で2アウト満塁のピンチを背負ったが、大嶺翔太から空振り三振を奪って切り抜けると、2回以降は、この日最速147kmの角度のあるストレートと、リリーフではあまり使っていなかったカーブで緩急をつけて安打を許さず、4回を無失点に抑えた。
試合後、小林宏二軍投手コーチは安堵の表情でこう話した。
「最初は考えすぎてコースを狙いすぎていた。でも今日は内容がどうのこうのという問題じゃなく、投げられたというだけでいいんじゃないですか。実戦は、怪我して以来だから」
小林慶祐にとって、9月30日以来の実戦登板。見ていた誰もが背筋を凍らせたあのアクシデントが起こった日だ。
ライナーが頭部にあたり、倒れこんだ10分間。
京セラドーム大阪で行われた9月30日の福岡ソフトバンク戦。5回途中からマウンドに上がっていた小林は、6回、ライナー性の鋭い打球が右目付近に当たり倒れ込んだ。うつぶせに倒れたまま両足をばたつかせてもがく姿に、選手生命、いや命そのものにも関わる最悪の事態さえ脳裏をよぎり、球場中が息をのんだ。外野の扉が開いて救急車がグラウンドに到着するまでの約10分間がとてつもなく長く感じられた。
病院での検査の結果、右まぶた上の打撲による裂傷で8針縫ったが、脳や目に異常はないと診断された。
その後小林は一軍登録を抹消され、舞洲の二軍施設で調整を行っていたが、10月のフェニックス・リーグに途中合流し、24日に実戦復帰を果たしたのだ。
体は万全の状態に戻っても、メンタル面への影響も懸念された。それゆえに、まずは「投げられたというだけでいい」という小林コーチの言葉に実感がこもった。