野球のぼせもんBACK NUMBER
ソフトバンクV奪回の裏で……。
二軍が極端に低迷したのはなぜか。
posted2017/09/29 08:00
text by
田尻耕太郎Kotaro Tajiri
photograph by
Kyodo News
工藤公康監督が涙で宙を舞ったV奪回の裏側で、もう1つのホークスはリーグ6連覇の偉業を逃した。
ホークスの二軍のことだ。
ウエスタン・リーグで'12年から昨年までリーグ優勝を続けてきたが、今季でそれが途絶えたのだ。9月19日のバファローズ戦(舞洲サブ)で敗れて可能性が完全消滅。その翌日にはリーグ最下位に転落するほど、今年は極端に低迷した。
「ウチの二軍がウエスタンで毎年優勝するのは当たり前ですよ」
以前、ホークスの関係者がこのように話していた。決して慢心ではない。
「だって三軍があるから。育成が必要な選手はそこで経験を積むことが出来る。二軍でプレーするのは、一軍に近い選手ばかり。他の球団は育成も二軍でやらないといけませんから、選手のレベルは当然ホークスの方が上になりますから」
ホークスが三軍制を導入したのは'11年で、この年は勝率6割で2位だった。そして翌年からリーグ優勝を続けていたというわけだ。
二軍とも思えぬ豪華なラインナップ。
なのに、今年はなぜ――?
特に今シーズンは例年以上に、二軍のラインナップには豪華な名前が並んだ。
野手では4年前の首位打者の長谷川勇也、通算129本塁打の吉村裕基、2年連続盗塁王に輝いたことのある本多雄一が同時に出場し、そこに代わる守備固めが昨年交流戦MVPの城所龍磨という試合も珍しくなかった。
投手もかつて一軍ローテで活躍した大隣憲司、山田大樹が規定投球回に達し、'12年沢村賞の攝津正も多くの試合で先発した。
山田を除く6名はもう30代の中堅からベテランの選手たちだ。彼らにとって、今季は厳しいシーズンだった。
今年のホークスは、明らかに世代交代を意識したチームづくりを行っていた。その象徴が、キャンプ前の1月20日に工藤公康監督と3年契約を結び直したこと。本来契約最終年だった工藤監督との契約をいったん破棄して、'19年までチームを託すことを球団は判断したのである。それは3年先も勝てる、常勝ホークスを作りあげてほしいというメッセージでもあった。