濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
東京女子プロレスが人気上昇中!
キーワードは“等身大”への感情移入。
posted2017/08/20 08:00
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph by
Norihiro Hashimoto
プロレス界は“超人”や“怪物”が躍動する非日常の世界である。が、決してそれだけではない。等身大だからこそ観客が感情移入できるということもある。
選手は柔道やレスリングで実績を残したアスリートばかりではない。かつての全日本女子プロレスのような、密閉された縦社会で鋭さを増す“狂気”の世界とも、今はだいぶ違う。
この夏、WWEと契約を果たしたカイリ・セイン(宝城カイリ)がもともと女優を目指していたのは有名な話だ。アイスリボンの取締役選手代表、藤本つかさがレスラーになったきっかけはプロレスを題材にした映画に出演したことだった。同団体の成長株である雪妃真矢は一般向けプロレスサークルの出身で、銀行員からの転身である。
彼女たちは、たとえば神取忍やアジャ・コングのように、誰がどう見ても怖くて強いタイプのレスラーではない。だけどその闘いや佇まいに「あんなものプロレスじゃない」とは言い切れない魅力があるのも確かだ。
そうした、超人でも怪物でもない者たちの、等身大の女子プロレスを推し進めて人気を高めている団体の一つが東京女子プロレスだ。おなじみ“文化系プロレス”DDTの系列団体。そもそもの数が違うから単純な比較はできないが、DDTとの昼夜連続興行では東京女子の観客数が上回ることもある。
良識派に怒られそう? なカラフルな要素満載。
2年連続で1月4日の後楽園ホール大会を成功させ、8月26日には今年2度目の後楽園大会を開催する東京女子プロレス。そのリングで繰り広げられる闘いは、カラフルそのものと言っていい。8.26後楽園で“女子プロレス界の横綱”里村明衣子に挑む山下実優は空手のベースがあるが、入門前は福岡から上京してアイドルを目指していた。
中島翔子は元お笑い芸人。プロレスでの活躍から結婚を目論むタッグ・婚勝軍(滝川あずさ&のの子)は結婚情報誌ゼクシィを凶器にしていたら編集部からクレームがつき、アイドルグループ・LinQのメンバー(8月20日で卒業するため“クビドル”を名乗る)伊藤麻希はマイクを握って秋元康や松井珠理奈にケンカを売る。いわゆる良識派、超人や怪物しか認めないプロレスファンには怒られそうな要素満載である。