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清宮幸太郎は早大進学より即プロへ!
東大相手に本塁打を量産しても……。
posted2017/05/29 07:00
text by
小関順二Junji Koseki
photograph by
Hideki Sugiyama
5月24日の夕方、電話出演した文化放送で清宮幸太郎(早稲田実・一塁手)の凄さと進路(プロか早稲田大進学か)について話した。茨城県で行われた春の関東大会を観戦したばかりだったので、プレーの凄みについては躊躇なく語れた。
春の関東大会は優勝しても“関東大会の覇者”という称号がつくだけで、道は甲子園につながっていない。負けてもダメージの少ない大会なら、高校ナンバーワンスラッガーと勝負して自分の力がどれだけ通用するか試してみたい、というのが高校生のメンタリティである。
結果は、2回戦の花咲徳栄戦は6打数4安打3打点、準々決勝の作新学院戦は4打数1安打1打点で、2試合続けてライトスタンドにホームランを放っている。甲子園出場を争う西東京大会では全打席勝負など望めないので、四球の嵐が吹き荒れる前の“一時の至福”を過ごしたと言っていい。
関東大会の前に行われた熊本の招待試合では秀岳館高校が9回ランナーなしから2番打者を敬遠し、3番清宮と勝負して話題になった。清宮が一塁ゴロに倒れて秀岳館が勝利するのだが、この奇策を鍛治舎巧監督は「甲子園大会でぶつかるかもしれないので経験を積ませたかった」と話している。この時期に勝負を挑まれる清宮はやはり大物と言っていい。
特筆すべきは、スイングスピードの速さ。
清宮のバッティングの特徴は、スイングスピードの速さにある。一般的にバッターは打ちに行く前、バットを引いたり、上下動したり、強めのステップをしたり、反動のアクションを起こすが、清宮はそれらの動きが極めて小さい。
花咲徳栄戦の一発は外角低めのストレートを捉えたもので、低いライナーの打球は両翼100メートルのライトスタンドを超えてしまった。昨年11月に行われた明治神宮大会決勝、履正社戦でも左腕の外角ストレートを捉え神宮球場の右中間スタンドに放り込んでいる。
このとき筆者は、清宮の強打をカメラに収めようとシャッターボタンに指をかけていたが、打つ気配がないのと外角球だったためシャッターを押せなかった。スイングスピードの速さと、打つアクションの小ささが惑わせたのである。