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ダルビッシュとカッターの増加。
必殺のスライダーを生かす投球術。

posted2017/05/13 07:00

 
ダルビッシュとカッターの増加。必殺のスライダーを生かす投球術。<Number Web> photograph by Getty Images

豪速球と多彩な球種を使い分けるダルビッシュ。2017年、進化のキーワードは「カッター」となり始めている。

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芝山幹郎

芝山幹郎Mikio Shibayama

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 ダルビッシュ有が順調に復活している。いくら医学が進歩したとはいえ、トミー・ジョン手術を受けたあとはどうしても不安がつきまとう。肘はもとより、肩や脚などに皺寄せが来て、新たな故障を発生させるケースが皆無とはいえないからだ。

 2015年を全休したダルビッシュは、16年5月28日に復帰し、その年9月末までに100回3分の1を投げた。17戦に先発し、7イニングス以上投げたのが3試合。7勝5敗、防御率3.41という数字は、試運転としてはまずまずだった。

 2017年のダルビッシュは、5月8日現在、7試合に先発して、45回3分の2を投げている。7回以上を投げたのはすでに3試合。3勝2敗、防御率2.76という数字は十分合格点だし、三振奪取率こそ例年に比べてやや低いものの、投球内容は昨年よりも充実しているのではないか。

6つの球種のうち、カッターの比率が今季増えている。

 アメリカのテレビなどではすでに何度か報じられたが、今季のダルビッシュは球種の比率をやや変えている。端的にいうと、スプリッターやツーシーム・ファストボール(シンカー)の比率を減らし、カッター(カットボール)の比率を増やしているのだ。

 ダルビッシュの球種は、大きく分けて6つだ。フォーシーム、ツーシーム、スライダー、カッター、スプリッター、カーヴ。2012年の大リーグ・デビュー以来、このメニューに大きな変化はない。ただ、比率が年々異なる。

 Statcastのデータによると、投げる頻度が最も高いのはやはりフォーシームだ。平均すると30%から40%の割合で、今季も4月中に投げた618球のうち218球(35.3%)がフォーシームだ。球速は、150~158キロと十分に速い。この球を軸に投球を組み立てるのは、当然のなりゆきだろう。ただ、奪三振王(277個/209回3分の2)に輝いた'13年だけは、スライダーのほうが多かった(スライダー=1288球、フォーシーム=1002球)。

【次ページ】 縦の変化よりも横の変化を重視する方向にスイッチ。

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