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村田諒太、やっと実現した世界戦。
マッチメークが困難を極めた事情。
posted2017/04/05 08:00
text by
渋谷淳Jun Shibuya
photograph by
AFLO
2012年ロンドン五輪金メダリストの村田諒太(帝拳)が5月20日、有明コロシアムで元WBO世界ミドル級王者、アッサン・エンダム(フランス)とWBA世界ミドル級王座決定戦を行うことが決まった。3日、都内で開かれた記者会見には多数のメディアが詰めかけ、翌日のスポーツ紙がトップで報じるなど、早くも注目が高まっている。
村田が記者会見を行ったのは、東京・九段下にあるホテルグランドパレスのゴールデンルーム。2013年4月12日、同じ部屋でプロ転向会見を行った日本ボクシング史上2人目の金メダリストが、4年の歳月をへて、ついに世界タイトルマッチの舞台にたどり着いたのだ。
「ミドル級の世界タイトルに日本で挑戦できることをありがたく思っています。プロに入る前、ミドル級は大変だと聞いていました。それはファイターにとって大変なものだと思っていましたが、実際に大変なのはサポートしてくれる方々でした」
村田は世界タイトルマッチの舞台に立つ喜び、感謝の言葉を真っ先に口にしたが、これはただの社交辞令ではない。実際に日本でミドル級の世界タイトルマッチを組むのは簡単ではなかった。
ゴロフキンとアルバレス以外がなかなか入り込めない。
現在のミドル級はWBAスーパー、WBC、IBFの3本のベルトを持つゲンナジー・ゴロフキン(カザフスタン)が実力で頂点に立ち、人気ではメキシコのスター、元WBC王者のサウル“カネロ”アルバレスが群を抜く。つまりミドル級戦線はこの2人がビジネスの中心であり、他の選手が入り込む余地はなかなか見当たらないのが現状だ。
そのような状況で、村田陣営は昨年から、WBO王者のビリー・ジョー・サンダース(英)を標的に定めて交渉を進めてきた。
昨年の段階で事務レベルでは対戦合意という段階にまでこぎつけたが、サンダース本人はゴロフキン、カネロとのビッグマッチを希望。村田戦には常に後ろ向きだった。