セリエA ダイレクト・レポートBACK NUMBER
イグアインが去っても得点は減らず。
ナポリの控えから覚醒した29歳の男。
posted2017/02/25 08:00
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph by
AFLO
ナポリの正念場だ。
15日のCLベスト16ラウンド1stレグで、レアル・マドリーに1-3で屈したナポリは、大会敗退の瀬戸際に立っている。
国内ではコッパイタリアの準決勝に残っているものの、今季こそと挑んだスクデット戦線は、2月中旬の時点で首位ユーベから勝ち点差9と水をあけられた。
欧州の檜舞台と国内2つのコンペティションに生き残れるか否か。
「私はすべての可能性にかける」
サッリ体制2年目のナポリが、シーズンの踏ん張りどころを迎えているのは間違いない。
ナポリのサッカーは、今季も高い連動性をもつ攻撃志向だ。
セリエAでは群を抜く技術レベルで観る者を魅了するだけでなく、25節終了時点でリーグ最多60得点を誇る。
36点獲ったイグアインが抜けたはずなのに……。
しかし、冷静に考えれば辻褄が合わない。
1人で36ゴールを稼いだ得点王イグアインを昨夏、ユベントスへ放出したナポリの得点力は半減したはずなのだ。
“イグアイン・ロス”の穴を埋める後釜候補の一番手は、アヤックスから獲得した若手の大器ミリクだった。9月末までに国内外で7ゴールを挙げ、期待以上の活躍を見せていた矢先、10月の代表戦で左膝前十字靭帯を断裂、全治4カ月の重傷を負った。
控えのFWガッビアディーニに代役の代役が回ってきたが、先発した8節ローマ戦で不発に終わり、ホーム惨敗の一因となった。3トップの戦術へ順応できなかった彼は指揮官サッリの信頼を得られず、冬にサウサンプトンへ放出されている。
絶対エースの穴を埋めたのは、意外にも169cmの小兵FWメルテンスだった。
控えの左ウイングだったメルテンスを3トップの真ん中に“偽の9番”として据えるコンバート起用は、いわば窮余の策だったが、小柄なベルギー人FWは最前線の中央で初先発起用された10節エンポリ戦以降、まるで水を得た魚のようにエリア内をきびきびと走り回りながら、本職のストライカーのような正確さでゴールラッシュを始めた。