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中日・吉見が「うちならエース」。
SB石川柊太を激変させた6日間。
posted2017/01/29 11:30
text by
田尻耕太郎Kotaro Tajiri
photograph by
Kotaro Tajiri
ホークスの石川柊太は最速153キロを誇る。
彼の目標はずっと千賀滉大だった。一見すれば、チームメートで同じタイプの本格派右腕だ。
石川が千賀に心惹かれた理由は他にもある。同じ育成枠出身だ。1つ年下でチームの後輩になるが、その立場から今年3月開幕のWBCの侍ジャパン選手にまで成り上がった投手に憧れて、いつかは同じ道を進みたいと考えるのはじつに自然な流れである。
しかしこの1月、自分の「常識」が間違っていたことを知った。
目指すべきはドラゴンズのエース・吉見一起だと教えられたのだ。
「最初、正直な感想は『え?』でした」
そうだろう。吉見といえば球界随一のコントロールの持ち主だが、球速で勝負をするタイプではない。石川のイメージとは真逆の投手だ。
しかし、たった数分後には、その疑念はすっかり晴れた。わずかなヒントで明らかに体の使い方が変わった。すると、それまで高めにしか行かなかったキャッチボールが低めにバンバン決まる。しかも威力は変わらず、グンと伸びる球筋だ。
一体どういうことなのか。
「自分で考えながら取り組む」自主トレに初参加。
1月16日から21日まで、石川は「コウノエスポーツアカデミー」代表の鴻江寿治氏が主宰するトレーニング合宿に初めて参加した。きっかけを作ってくれたのは千賀だった。千賀はプロ1年目から毎オフ、この地を訪れている。鴻江トレーナーの独自の理論に基づいた指導を仰ぎながら、フォームづくりをして基盤を固めていくのが恒例となっている。
石川を誘った理由を、千賀はこう説明した。
「この自主トレ合宿はただ練習をするのではなく、自分でしっかり考えながらやる場所。とても頭を使うし、普段からフォームのことを真剣に考えている人じゃないと無理。石川さんならば、大丈夫だと思った」