オリンピックへの道BACK NUMBER
挑戦し続ける意志と過程の尊さ。
浅田真央と村上佳菜子の未来。
posted2017/01/07 11:30
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph by
Asami Enomoto
2016年12月25日、全日本選手権女子。フリーを終えて、対照的な表情を見せた2人の心根には、相通ずるものがあったかもしれない。
演技を終えたあと、氷上に両手をついたまま、しばらく動けなかった。すべての力を出し尽くしたかのようだった。
「これだけスケート人生を歩んできた、そのすべてを出せるようにと思っていました。出せたことが、うれしかったです」
村上佳菜子はソチ五輪に出場した翌シーズンから、苦しい時間が続いた。
2014年の全日本選手権では、ショートプログラムでジャンプの回転不足を取られ、9位に沈み、呆然とした表情を浮かべずにはいられなかった。総合でも5位と5年ぶりに表彰台を逃した。世界選手権代表には選ばれたものの7位に終わり、昨シーズンは5大会連続で出場していた世界選手権の代表から外れた。
今シーズンのグランプリシリーズでは10位と11位。ジャンプでの失敗や回転不足を取られることが相次いだ。
迎えたのが全日本選手権だった。
今シーズンでも上々の出来に、会場から拍手が起きる。
ショートプログラムは「フリーに進めなかったらどうしよう」と思うほど追い込まれている中、12位。
迎えたフリー。
冒頭のトリプルフリップ、続くダブルアクセル、トリプルトウループ-ダブルトウループと成功。拍手が起こる。
ジャンプを成功させると、「トスカ」の曲調を引き出し、場内の熱気を高める。
回転不足を取られたジャンプはあったものの、今シーズンのこれまでにない滑りに、村上は涙と笑顔で喜びを露わにした。