オリンピックへの道BACK NUMBER
本田真凜と紀平梨花のライバル関係。
会場を熱狂の渦に巻き込んだ名演技。
posted2016/10/16 11:00
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph by
Kyodo News
異例の数の観客がつめかけていた。満席のスタンドの背後にも、立ち見の人が幾重もの列をなしていた。スタッフがスタンドを見てまわって1人でも座れるスペースがないかを探し、少しでも余地があれば、協力を求めて何とか押し込む。
10月9日、大阪府臨海スポーツセンター。この日、近畿選手権のジュニア女子フリーが行なわれた。その最終グループのスタートが近づくにつれ、期待と緊張は高まっていった。
その中に登場した2人の滑りは、渾身のとも、名勝負とも言える演技だった。
最後から2人目に登場したのは、ショートプログラム3位の紀平梨花(きひら りか)。9月24日、ジュニアグランプリ・スロベニア大会で史上7人目となるトリプルアクセルを成功させて優勝した新鋭だ。
非公認とはいえ、本田の最高点を超える130.74。
一躍、脚光を浴びる存在となった紀平は、冒頭トリプルアクセルをいとも簡単に見えてしまう美しさで着氷する。
「おおっ!」
スタンドから、どよめきのような声が大きく響き渡る。
トリプルアクセルの安定感同様、以後も失敗しそうな雰囲気を感じさせない。トリプルルッツ-トリプルトウループ、トリプルループと成功。後半も乱れはない。ダブルアクセル-トリプルトウループ、トリプルフリップ-ダブルトウループ-ダブルループ、トリプルサルコウ、トリプルルッツ。すべてのジャンプを成功させる。
思わず、スタンドに座る人々が立ち上がり、スタンディングオベーションで称える。
得点が出る。
130.74。
フリーのジュニア女子世界最高得点は、今年9月に本田真凜が出した128.64。今大会は国際スケート連盟の公認記録とはならないが、それを上回る驚異的な得点をあげる。
総合得点も195.18に達した。