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イチローがオフに仕込んだ速球対策。
パワー投手相手の打率が大幅上昇。

posted2016/09/27 11:00

 
イチローがオフに仕込んだ速球対策。パワー投手相手の打率が大幅上昇。<Number Web> photograph by Getty Images

イチローの安打数はすでに昨年を越え、100本の大台も視野に捉えている。もうこの男が何をしても驚くことはない。

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笹田幸嗣

笹田幸嗣Koji Sasada

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 “差し込まれる”と“詰まらせる”。

 似て非なる表現だが、打撃では大きな違いとなる。自分の感覚に反し、振り遅れてしまうのが差し込まれる。詰まらせるは、自分の意思で意図的にポイントを遅らせ、ボールを運ぶテクニックだ。

 フラフラっと上がった小飛球を三塁手や遊撃手の後方に落とす安打はイチローならではの技術と言えるが、10年連続200安打が途切れた2011年から昨季まで、イチローは“差し込まれる”感覚と常に戦い続けてきたと思っている。

 昨季、相手バッテリーはイチローに対し、容赦なく高めの速球系、いわゆる150キロ以上のパワー系のボールで勝負を挑んだ。この球に対して差し込まれることが多かった。結果、フォール、ポップフライ、空振りが増えた。高めのパワーボールを意識するがあまり、カーブやチェンジアップのオフスピードの変化球にバットが回ることもあった。メジャー15年間で平均.314の打率を残してきた孤高の安打製造機が昨季残した打率は.229。衰えと結びつけられても仕方のない数字だった。

 だが今年、ご存知のようにイチローはV字回復を果たした。9月25日の時点で打率は.289。昨季のような“差し込まれる”打撃は影を潜め、それどころか150キロ以上のパワー系ボールをことごとく芯で捉える打撃が蘇った。しかも打球方向は大半が右翼を占める。42歳にして高めのパワーボールに力負けしない驚きの事実。米国の野球データサイトであるベースボール・リファレンスにはこんなデータも出ている。

 通算  vs.パワー投手 打率.298
 '15年 vs.パワー投手 打率.255
 '16年 vs.パワー投手 打率.314

159キロを弾丸ライナーで打ち返したオープン戦の衝撃。

 開幕直前、記憶に残る3日間がある。

 3月27日。オープン戦に代打で出場したイチローは、カージナルスの守護神として開幕を迎えたローゼンタールの99マイル(約159キロ)の真ん中高めの直球を弾丸ライナーで中前へ弾き返した。昨季、散々に苦しめられてきた高めのパワーボール、しかも159キロを痛烈に打ち返したのである。

 試合後、イチローに「99マイルでしたよ、あのボール」と伝えると、オープン戦では滅多に真顔にならない男の表情が一変した。彼の頭の中で、回路がグルグルと音をたて動いている。そんな印象を持った。

【次ページ】 イチローの打席には、明らかにテーマがある。

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