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「内山高志なき夜」W世界戦の主役。
“つよかわいい”田口良一に貫録が。
posted2016/09/01 17:00
text by
渋谷淳Jun Shibuya
photograph by
AFLO
ワタナベジム主催のダブル世界タイトルマッチが8月31日、東京の大田区総合体育館で行われた。WBA世界ライトフライ級王者の田口良一(ワタナベ)が元WBA世界ミニマム級王者で指名挑戦者の宮崎亮(井岡)に大差判定勝ちを収め、WBA世界スーパーフライ級王者の河野公平(ワタナベ)は暫定タイトルを保持するルイス・コンセプシオン(パナマ)に判定で敗れ、王座から陥落した。
今回のイベントにサブタイトルをつけるなら、それは「内山高志なき夜」ということになるかもしれない。内山がWBA世界スーパーフェザー級王者になった2010年1月から、ワタナベジムと試合を中継するテレビ東京は常に内山をメインイベントに据えてタイトルマッチを開催してきた。内山と同じリングで河野が7度、田口が4度の世界戦を行っているが、いずれも同じ世界タイトルマッチながら“前座”扱いだった。
その内山が今年4月、12度目の防衛戦でジェスレル・コラレス(パナマ)にまさかの敗戦を喫して6年以上守っていた王座から陥落。今回は「内山抜きで興行が打てるのか」と、世界戦開催そのものを心配する声もありながら、田口と河野によるダブル世界タイトルマッチが挙行されたのだ。
“モンスター”井上との激闘でむしろ株を上げた。
内山の代わりにメインイベンターに指名されたのは、キャリアで上回る河野ではなく、内山が最も可愛がっている後輩の田口だった。田口のメイン抜てきは、対戦相手が日本人の元世界王者、宮崎ということもあったが、ジムの期待の表れでもあった。
田口のことは本コラムでしっかり紹介したことがない。簡単に説明しておこう。29歳の田口はこれまでの戦績が24勝11KO2敗1分。2013年に日本チャンピオンとなり、初防衛戦であの“モンスター”井上尚弥(大橋)と対戦して王座から陥落したが、最後まで粘り抜いて敗れながらむしろ株を上げた。頼りなさそうな風貌に似つかわしくなく、打ち合いを好む強気なファイトが売りで、テレビ東京は“つよかわいい”というキャッチフレーズをつけている。