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西武には、やはり鬼崎裕司が必要だ。
その左眼は常に前だけを見ている。

posted2016/05/28 11:00

 
西武には、やはり鬼崎裕司が必要だ。その左眼は常に前だけを見ている。<Number Web> photograph by Matsumoto Kiichi

100試合に出場したのは2013年の一度だけ。今季は再び3ケタペースで出場を重ねている。

text by

氏原英明

氏原英明Hideaki Ujihara

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Matsumoto Kiichi

 ヒーローインタビューで絶叫したその言葉に、彼の苦悩がうかがえる。

 5月21日のソフトバンク戦でのことだ。

 9回裏2死一、二塁の場面で、プロ入り初となるサヨナラ適時打を右中間に放った鬼崎裕司が、「苦労しかないです」とその想いを言葉にしたのだった。

 チームでは、完全なレギュラーという立ち位置ではない。

 けれども縁の下の力持ちとして、チームを支える黒子役として、今のチームには欠かせない存在となっている。

「準備ですね。いつ出ても自分の力が出せるようにと思って、心と気持ちだけは常に準備しています。自分の持ち味は確実で堅実なプレー。派手さは求められていないと思うので、堅実にプレーしようと心掛けている」

 2011年にヤクルトからトレードでやってきた。一軍と二軍、レギュラーと控えのはざまを行ったり来たりした後、2013年のシーズン後半にレギュラーをつかんだ。渡辺久信元監督(現シニアディレクター)のもとで主に9番を任され、意外性のあるバッティングと堅実な守備力で、シーズン2位に躍進するチームを支えた。

「レギュラーとして使ってもらえたんで、すべてが勉強になりました。自分のスタイルでも、プロ野球選手としてやっていけると思えたシーズンだった」

 レギュラー出場を続けていた時期を、本人はそう振り返る。

故障、そしてタイムリーエラーで即刻二軍落ちも。

 ところが、2014年からは状況が一転する。開幕してすぐに自打球で負傷、長期離脱を余儀なくされて活躍の場を失った。昨シーズンもケガが重なり一、二軍を行き来することに。2013年に比べると、ここ2年間、鬼崎の存在感は随分と薄くなっていた。

 今季も、開幕はベンチからのスタート。一軍、二軍を行ったり来たりする9年目の鬼崎よりも、次世代育成を考えて、2年目の外崎修汰や金子侑司が使われるのは自然の成り行きだった。

 一度はレギュラーをつかみかけたが、4月22日の試合で敗戦につながるタイムリーエラーを犯すと、即刻二軍落ち。若い外崎はミスを繰り返しても一軍のままだったが、鬼崎はたった一度のミスで厳しい処遇を受けた。

【次ページ】 どんな逆風にも嘆かず、受け入れて先に進む。

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