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日本新を出さないと五輪に行けず!?
代表選考が暗過ぎる男子マラソン。
posted2016/03/09 10:30
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph by
Yohei Osada/AFLO SPORT
称えられるべき健闘があった。だが、それに影を投げかけた存在も、あらためて浮き彫りになった。
3月6日、リオデジャネイロ五輪代表選考の最後の大会、びわ湖毎日マラソンが行なわれた。ロンドン五輪代表の中本健太郎、世界選手権代表の前田和浩ら実績のある選手もいる中、日本勢トップとなったのは一般参加の北島寿典だった。
一定のペースで日本選手の集団にいた北島は、30km過ぎの丸山文裕の仕掛けにも食い下がり、39km過ぎに丸山を抜いた石川末廣をも追い、残り1kmあまりで抜く。
トラックではアルフォンス・フェリクス・シンブもかわし、優勝したルーカス・ロティッチに5秒差に迫る2位でゴール。見応えのある粘りで出したタイムは2時間9分16秒。自己記録を3分以上更新したのである。
北島に抜かれた石川も自己記録にあとわずかの2時間9分25秒で日本勢2位(全体4位)。
北島、石川らの走りは、オリンピックへの執念を感じさせたし、過度の牽制のない争いがマラソンの面白さを伝えもした。ただ、その健闘は、ストレートに伝えられない面があるのも否めない。それは五輪代表選考基準、その中でも派遣設定記録にある。
結局、タイム他の全条件がクリアできず……。
あらためて、選考基準を確認すると、こう定められている。
・昨年8月の世界選手権で入賞した選手のうち最上位は内定。
・福岡国際、東京、びわ湖毎日のそれぞれ日本人上位3名のうち派遣設定タイム(2時間6分30秒)を優先的に選ぶ。
・各レースの記録や順位、気象条件などを考慮し選出。
世界選手権では21位(藤原正和)が最上位となり誰も入賞できなかったため内定者は出ず、残りの選考対象3大会でも、派遣設定タイムの突破者もいなかった。そのため、3つ目の基準により選考されることになった。
ただ、それぞれの大会の結果を見るとき、2時間6分30秒というタイムはどうしても比較対象としてクローズアップされる。結果、健闘が健闘として捉えられない面も出てくる。例えば、記録が物足りない、世界では戦えない、レベルが、などなど。選手個々のこれまでを考えれば素晴しい走りでも、選考基準からすれば……ということである。