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“ドーピング時代”の世界記録たち。
陸上界が問われる、過去との決別。

posted2016/01/24 10:30

 
“ドーピング時代”の世界記録たち。陸上界が問われる、過去との決別。<Number Web> photograph by AFLO

国際陸連のセバスチャン・コー会長は、リオ五輪出場競技へのロシアの出場停止もありうるという姿勢を見せている。

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松原孝臣

松原孝臣Takaomi Matsubara

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 昨年11月、ロシア陸上界の大規模なドーピングが告発されたが、その余波は、今なお、おさまることはない。

 容易に見えてこない展望からか、1月15日のAFP通信の記事に、国際陸上競技連盟のセバスチャン・コー会長のコメントがこう記されている。

「信用を取り戻す道のりは、長期間にわたり痛みを伴う行程になるだろう」

「われわれは信頼を得るために、あらゆる手段を講じていかなければならない」

 陸上界の今後を考えるためには、長年、喉に刺さった骨のようにつかえている問題にも向き合わなければならない。それを「'80年代問題」と言った人もいる。

 陸上の世界記録や世界ランキングを眺めると、興味深い事実があることに気づく。

 特に女子で、1980年代に生まれた記録が今なお、上位に少なからず残っていることだ。種目によっては'70年代の記録がトップ10にあったりもする。他の競技では考えにくい状況がある。

ランキング12位までが全て'80年代の記録の競技も。

 例えば、100m、200mはフローレンス・ジョイナー(アメリカ)がともに1988年に出したタイムが世界記録だ。砲丸投げでは、世界ランキングの8位までが'70年代ないしは'80年代に出された記録である。

 ランキング12位までのすべてが'80年代の記録である円盤投げの場合、驚くべき事実がある。1988年にガブリエレ・ラインシュ(東ドイツ)が出した世界記録は76m80。一方、男子の世界記録はユルゲン・シュルト(東ドイツ)による1986年の74m08と、女子の世界記録が上なのだ。ちなみに女子の2番目の記録は2名の選手が出しており、74m56。もちろん円盤自体の重さが違うということもあるとはいえ、女子3名の記録が男子の世界記録を上回っていることになる。

 可能性として、女性アスリートが男性の記録を上回ることは絶対にないとは言い切れない。しかし、円盤投げの特質を考えれば……男子よりも記録を出していることは、そのまま受け止めにくくもある。

【次ページ】 東欧諸国、特に東ドイツでは国家ぐるみのドーピングが。

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