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希望より早く訪れた“ジダン監督”。
会長が野放しならば苦境は必至?

posted2016/01/05 12:00

 
レアル・マドリーが大切に大切に育ててきた“ジダン監督”は意外にもシーズン途中での登板となった。

レアル・マドリーが大切に大切に育ててきた“ジダン監督”は意外にもシーズン途中での登板となった。

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工藤拓

工藤拓Taku Kudo

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AFLO

 1月4日、ラファエル・ベニテス監督の解任が発表された。

「我々は本日、とりわけ私にとって難しい決断を下し、ラファ・ベニテスとの契約を解消した。彼は偉大なプロフェッショナルであり、素晴らしい人間だったことを今一度示したい。そしてこの数ヶ月間、彼がやってきた仕事と献身に感謝したい」

 数日前までその可能性を全否定していたフロレンティーノ・ペレス会長は何の説明も行うことなく、僅か40秒の短いコメントのみで伝えられたレアル・マドリーの監督解任は、ごく自然な出来事として受け入れられた。

 それは大多数のファンとメディアが待ち望んでいた“朗報”だったからだ。

 みなに愛されていたカルロ・アンチェロッティの後釜としてやってきたこともあり、ベニテスは就任当初から常に前任者が残した良いイメージとの比較にさらされ続けてきた。

ベニテスはあらゆる不満のスケープゴートだった。

 象徴的だったのは、リーガ・エスパニョーラでは'59-'60シーズン以来となる10ゴールの歴史的大勝を挙げたラージョ・バジェカーノ戦だ。

 レアル・マドリーのゴールラッシュが始まったのはラージョが2人の退場者を出した後のこと。数的同数のうちはラージョがスコア、内容共に上回っていたことは確かだ。それでもこの日サンティアゴ・ベルナベウのスタンドが示した反応は厳し過ぎるものだった。10分、12分に連続失点を喫した時点で怒りを爆発させたのはまだ分かるが、その後4-2と逆転して迎えたハーフタイムまで口笛とブーイングが鳴り止まなかったのは穏やかではない。

 それは彼らが訴えた不満がこの試合で生じたものだけではなく、ここ数カ月に渡って蓄積されてきたものであることを物語っている。

 誰もが続投を求めていたアンチェロッティの解任、まさかのダビド・デヘア獲得失敗、クラシコの屈辱的大敗、コパデルレイの失格騒動――。この数カ月間、クラブが世界に向けてさらしてきた失態の数々を振り返れば、ファンが溜め込んできた不満の大きさも想像できる。

 そしてこの7カ月間、彼らの不満を一身に背負うスケープゴートとなってきたのがベニテスだった。

【次ページ】 会長の意向とファンのご機嫌の狭間で。

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