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シックスマンに徹してNBA優勝へ!
イグダーラの覚醒と今季への想い。
posted2015/10/27 10:30
text by
宮地陽子Yoko Miyaji
photograph by
Yukihito Taguchi
アンドレ・イグダーラ(ゴールデンステイト・ウォリアーズ)の長所であり、かつ弱点でもあるのは、率直すぎることかもしれない。
過去にも、思ったままのことを口にして話題を振りまいたことがあった。紋切型なコメントでかわすのではなく、必要以上にオブラートに包むことのないコメントは、取材する側からすると新鮮で面白く、よく聞けば悪気があって言っているわけではないこともわかるとはいえ、話題になりそうな言葉だけが一瞬で世界中を駆け巡る昨今、そんな言葉が物議をかもすこともある。
来日時にインタビューしたときにも、イグダーラは興味深いことを言っていた。シックスマン賞(控えからの出場で活躍した選手に贈られる賞)についてだ。
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コメントを抜きだすだけでは誤解がありそうだったこともあり、文字数の関係から本誌(Number888号)の記事には入らなかったのだけれど、ここでそのイグダーラのコメントを少し掘り下げてみたい。
「シックスマンは控え以上の存在になれる」
昨シーズン、イグダーラはスターターを外れて控えにまわることを受け入れた。それまで、NBAに入ってから10シーズンの全758試合でスターターだったイグダーラが、チームのために控えの役割を受け入れたことは、ウォリアーズ優勝の大きな鍵だったと、ヘッドコーチのスティーブ・カーもチームメイトたちも、口々に称賛していた。
もっとも、シックスマンの役割こそ受け入れたイグダーラだったが、リーグで最高のシックスマンに与えられる『シックスマン賞』については、別の考えがあるようだ。
今年4月、シックスマン賞の投票で4位に終わった後、コメントを求められたイグダーラが「受賞したくなかったから、選ばれなくてよかった」と言っていた。他の選手なら、単なる負け惜しみとも思うのだけれど、イグダーラである。彼なりの哲学があるのだろうと、インタビューの時に、その真意を聞いてみた。
すると、イグダーラはこう答えた。
「選ばれたくなかった。あの賞自体があまり好きではないんだ」
──なぜ好きではないのですか?
「色々と思うことがあってね。シックスマンであるということがどういうことなのかの正しい理由を定義づけることは難しい。シックスマンは控えから出てきて、多くの得点をあげる選手だという考え方もある。でも、実際にはそれ以上の存在になれるわけだから」