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4度の昇格、そして4度目のマイナー。
川崎宗則は「味方の士気を高める男」。
posted2015/08/15 11:00
text by
ナガオ勝司Katsushi Nagao
photograph by
Getty Images
8月9日、ムネリンこと川崎宗則が、マイナーリーグに降格した。
実に今季4度目のマイナー降格である。その前日、ブルージェイズがクリフ・ペニントンという控え内野手を補強したためだった。川崎が今季4度目のメジャー昇格を果たしたのが8月1日。新人で打率3割を打っていたデヴォン・トラビス内野手が左肩を傷め、15日間の故障者リスト入りしたことを受けての措置である。それから実質的にはわずか一週間の“メジャー滞在”だった。
「これがアメリカ。ブルージェイズが素晴らしい補強をしたということ」
遠征先のニューヨークから傘下のマイナーAAA級の本拠地バッファロー(ニューヨーク州北部の町)へ向かう直前、彼は日本の報道陣を前にそう言ったという。
それでも、DFA(Designated for Assignment=メジャー昇格の条件である40人枠を外す措置)にならなかったのは幸いだった。“途中出場”が彼の舞台である以上、メジャー再昇格は9月のコールアップ(出場選手枠が広がる時期)まで待つしかない。
悔しくないはずはない。煮え切らない思いもあるだろう。だが、彼が前出のような達観したコメントを出したのは、それは彼がメジャーリーグの日常の中に溶け込んでいるからだ。
トロントでは主力よりも大きな声援を受ける。
マイナーでの川崎は、試合に出たり出なかったりの48試合で打率.267、出塁率.368、長打率.322。それでもメジャーに上がれるのは、川崎がメジャーの控え内野手として実績を積み上げてきたからだ。
トロントへ行けば、主砲ホゼ・バティースタを上回るほどの声援が飛ぶことから「人気面を考慮されたのでは?」という声もあるようだが、それは100%ないと断言できる。ここはメジャーリーグだ。実績や信用がない選手をこういう成績、こういう形でメジャーに昇格させたりマイナーに降格させるようなことは有り得ない。
ただし、「味方の士気を高める男」としての抜擢と言うのなら、それは少し、あるのかも知れない。