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日本代表には、「走る技術」がない?
岡崎慎司の専属コーチが語る本質。
posted2015/07/13 10:40
text by
木崎伸也Shinya Kizaki
photograph by
Takuya Sugiyama
「世界がどんどん走るサッカーをしているのに、南アフリカW杯以降、日本ではポゼッションという言葉が流行ってしまった」
杉本龍勇(岡崎慎司の専属フィジカルコーチ)
日本のサッカーには何かが足りない――。ブラジルW杯における日本代表の惨敗を見て、多くの人がそう感じたのではないだろうか。
技術水準が上がり、経験も積んで、戦術の引き出しも増えた。なのにW杯で1勝もできなかった。メキシコ人のアギーレが来ても、ボスニア・ヘルツェゴビナ人のハリルホジッチが来ても停滞感が漂い続けているのは、重要な何かが欠けているからに違いない。
そんなことを考えているとき、答えのひとつを示す人物に出会った。
フィジカルコーチの杉本龍勇(法政大学教授)だ。
陸上選手だった杉本はベルリン留学を経て、清水エスパルスのフィジカルコーチなどを歴任し、2012年から岡崎慎司の専属コーチを務めている。ブラジルW杯前には吉田麻也の指導も行ない、今夏には岡崎と吉田の“プレミアリーグコンビ”に対して合同トレーニングを行った。
岡崎は恩師にこう感謝している。
「龍勇さんのおかげでスピードが上がった。自分が神戸で始めたサッカースクールでも、龍勇さんのトレーニングを取り入れています」
「日本人は速度が上がるとスキルが発揮できなくなる」
そもそも今回、杉本を取材したのは、Number879号で「岡崎の作り方」を取材するためだった。
だが、法政大学を訪れて最もインタビューが白熱したのは、日本サッカーの切実な問題点だった。
研究室のソファに座ると、杉本はいきなり問題の本質を貫いた。
「今のサッカーのトレンドは、全力疾走状態でどれだけ高いスキルを発揮できるかだと思うんです。これは、ヨーロッパの選手たちを見れば一目瞭然でしょう。では、日本人選手はどうか? 日本人はスピードを落とせばスキルの高さを発揮できる。しかし、速度を上げると途端にそれができなくなる傾向がある。だから僕は常々『日本代表はカウンターができない』と言っているんです」