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バトンパスが生む好記録。
~好調男子リレーの「利得タイム」~ 

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小川勝

小川勝Masaru Ogawa

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photograph byAP/AFLO

posted2015/06/11 10:00

バトンパスが生む好記録。~好調男子リレーの「利得タイム」~<Number Web> photograph by AP/AFLO

世界リレー選手権で銅メダルに輝いた日本代表。桐生祥秀(左から2番目)は、「メダルも獲れたし、いい遠征になった」と語っていたが、6月3日に右太もも裏肉離れを発表。回復が待たれる。

 日本の陸上界では今年、すでに三つの注目すべきニュースがあった。

 追い風参考ながら桐生祥秀が100mで9秒87、男子20km競歩で鈴木雄介が世界記録、そして世界リレーにおいて男子400mリレー、日本男子が銅メダル獲得。中でも男子400mリレーの銅メダルは、控えの選手が活躍した快挙だけに、陸上界にとって手応えのある結果だった。

 5月に開催される世界リレーは今年でまだ2回目だが、8位以内に入ればリオデジャネイロ五輪の出場権が獲得できるため、各国とも五輪種目の400mリレー、1600mリレーにはかなり力を入れていた。400mリレーに関して言えば、日本は当初、昨年の日本ランキングで100m上位3人の桐生祥秀(昨年10秒05)、高瀬慧(同10秒13)、山縣亮太(同10秒14)、そして今年4月に300mで日本新記録を出した200mのスペシャリスト藤光謙司(同10秒28)、この4人で組むのが最強メンバーではないか、と見られていた。

 ところが山縣、高瀬の2人が故障で代表を辞退した。山縣は腰痛が十分に回復せず、高瀬は4月18日、織田記念の200mで予選トップの20秒34(追い風2.9m)を出して好調だったが、決勝で左太ももの痙攣が出て途中棄権。5月2日の世界リレーには、万全な状態で出場できないと判断して辞退となった。

世界リレー、2秒83という「利得タイム」が持つ価値。

 結局、桐生と藤光以外で開催地のバハマに行ったのは、織田記念の100m、桐生と同じ10秒40で2位タイになったベテランの塚原直貴(昨年10秒28)、織田記念ではB決勝1位だった法大3年の大瀬戸一馬(同10秒25)、そして控えとして中大3年の谷口耕太郎(同10 秒45)だった。これは日本代表として組んだ経験のないメンバーだった。それでも、北京五輪銅メダルのメンバーでリレー経験が豊富な塚原であれば、なじめるのでは、と思われたが、その塚原が現地入りして故障、最終的には控えの谷口がアンカーを走ることになった。

 世界リレーの時点では、4人とも今年、好天の中で走った100mの公認記録はなかった。そこで、現在の実力を反映した記録として、昨年の年間自己ベストを使って4人の合計タイムを計算してみると41秒03になる。だが実際には、この大瀬戸-藤光-桐生-谷口という4人で、世界リレーの決勝では日本歴代3位となる38秒20を記録したのである。合計タイムとリレーのタイムの違いは「利得タイム」と呼ばれている。バトンパスが上手くいけばいくほど、利得タイムは大きくなる。世界リレーでの日本は、それが別表に示した通り2秒83だった。

【次ページ】 日本の生命線、アンダーハンドパスがより一層進化。

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