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ゴルフ界の「中国経由アメリカ行き」。
隣の青い芝を“踏みに行く”男たち。

posted2015/05/12 10:40

 
ゴルフ界の「中国経由アメリカ行き」。隣の青い芝を“踏みに行く”男たち。<Number Web> photograph by AFLO

16歳でゴルフを始めるという遅いスタートにもかかわらず、中国で存在感を増しつつある呉阿順。アメリカツアー、そしてリオ五輪を騒がせる存在になるか。

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桂川洋一

桂川洋一Yoichi Katsuragawa

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 国内の男子ツアーがようやく開幕戦を終えた頃、海の向こうで、アジアから世界に続く扉を開けたプレーヤーがいた。

 中国出身の呉阿順(ゴ・アジュン)。日本ツアーで一昨年までに2勝を挙げている29歳だ。

 彼が飛躍を遂げたのは、4月末のボルボチャイナオープン。ユーラシア大陸を中心に世界全土を舞台としている欧州男子ツアーのひとつである。

 呉は日本ツアーのオープンウィークを利用して母国でのビッグイベントにスポット参戦し、最終日を4人が並んだ首位タイからスタートして混戦を制した。同国出身選手として史上3人目の欧州ツアー優勝で、米国との繋がりが強い同ツアーのシード権を獲得。軽やかにステップを駆け上がった。

100mを10秒台で駆け抜ける新時代のゴルファー。

 呉は、中国のジュニア育成プログラムの旗振り役を担う選手である。

 家庭環境は決して裕福ではなく、ゴルフを始めたのは16歳の時だった。ズバ抜けた運動能力を見出され、開校間もないゴルフ学校に誘われてクラブを握ったのがきっかけだ。

 アジアンツアーからプロのキャリアをスタートさせ、日本ツアーの出場権を得るために、毎年末に行なわれるQT(予選会)は過去に4回も挑戦した。

「僕は多くの選手たちのように“ナチュラルゴルファー”ではない。ただただ、いろんな場所でプレーして、練習して、練習してきた」

 地元にはゴルフ学校出身の選手たちで構成されるチームがある。それゆえ、一昨年の11月に日本で2勝目を飾った際には、優勝賞金4000万円を全額チームに寄付した。

「僕はチームにお世話になって成長できた。その恩返しをずっとしなくちゃいけない」

 今後のスケジュールも「いったん、チームの皆で相談してから決めたいんです」と義理堅いところがある。

 日本の会場では、腰が低く、人懐っこい笑顔でファンのサインに丁寧に応じる姿がよく見られるが、実はその体格は身長183cm、85kgという恵まれたもの。学生時代は100mを10秒台で駆け抜けたというのだから、新時代のゴルファーといって間違いない。

【次ページ】 中国がリオ五輪に向けて力を注ぐスポーツ政策。

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