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「無事是名馬」を全うした“ジェン子”と厩務員の絆。
~GI7勝の名牝を支えた名人芸~ 

text by

片山良三

片山良三Ryozo Katayama

PROFILE

photograph byNIKKAN SPORTS

posted2015/02/08 10:30

有馬記念後の引退式典でジェンティルドンナを引く日迫厩務員(右)と井上泰平調教助手。

有馬記念後の引退式典でジェンティルドンナを引く日迫厩務員(右)と井上泰平調教助手。

 3年1カ月10日の競走生活で19戦10勝(未勝利戦の勝利以外はすべて重賞。うち7つがGIのビッグタイトル!)の大成果をあげた、名牝ジェンティルドンナ('09年生まれ、父ディープインパクト、母ドナブリーニ、栗東・石坂正厩舎)が、3歳シーズンに獲得した年度代表馬の栄誉を、5歳シーズンでもう一度取り返したことを花道として、無事に現役を引退。生まれ故郷のノーザンファームに帰って繁殖牝馬となった。

 獲得賞金は、4歳時と5歳時に2度遠征したドバイシーマクラシック(2、1着)で稼いだ分を日本円に換算した金額を含めて、17億2603万400円。これはテイエムオペラオー(26戦で18億3518万余円)には届かなかったものの、オルフェーヴルが21戦で稼いだ15億7621万余円を抜いての史上2位。牝馬としてはもちろんトップの数字を歴史に刻み込んだ。記録をあげていくのはキリがないほどだが、牝馬クラシック3冠、ジャパンカップ連覇、ドバイでのGI、有終の有馬記念と積み重ねたGIタイトル7個は歴代首位タイ。シンボリルドルフ、テイエムオペラオー、ディープインパクト、ウオッカに次ぐ5頭目と書き出せば、まさに歴史的な名牝だったことが伝わるだろう。

パドックでストレスをぶつけられても可愛かった。

 M・デムーロ、メンディザバル、ルメール、岩田、川田、ムーア、福永、戸崎と、多くのジョッキーに乗られて結果を出し続けたジェンティルドンナだが、世話係はデビューから引退まで日迫真吾厩務員が務めきった。有馬記念後に引退式を行ない、中山競馬場から牧場に直接向かう馬運車に乗せるところで彼の仕事は終わったわけだが、その夜の祝勝会の宴の美酒は、喜びが寂しい気持ちを上回ることはなかったという。

 日迫さんは愛馬の話をするとき、「ジェン子は……」と始める。パドックでしばしば日迫さんの引き手綱を手こずらせるシーンが見られたが、「ああやってストレスを僕にぶつけてくるんです。でも、騎手が跨るまでには納得して、集中してくれる。そこがまた、なんとも可愛い」

 一度もケガをさせずに競走生活を全うさせたことが、彼のホースマンとしての誇りだ。体重調整には特に気を遣い、474kgデビューで引退時が470kg。名人芸で最も走りやすい馬体を維持した。

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