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ロッテ岡田幸文が見せる“本塁打級”の守備。
~超美技は五感を研ぎ澄まして~ 

text by

石田雄太

石田雄太Yuta Ishida

PROFILE

photograph byNIKKAN SPORTS

posted2014/08/25 10:00

作新学院出身の30歳。日大の同期に巨人の長野久義がいる。2008年、育成枠でロッテが指名。

作新学院出身の30歳。日大の同期に巨人の長野久義がいる。2008年、育成枠でロッテが指名。

 幕張の浜から強い風が吹きつける7月31日の夜。千葉に集ったマリーンズのファンは、岡田幸文が打席に入ると、ひときわ大きな声でこう叫んだ。

「ホームラン、ホームラン、岡田」

 もちろん、ホームランを期待していたわけではなかろう。しかし、誰もがそう叫ばずにはいられなかった。何しろ目の前で、あるプロ野球記録が塗り替えられようとしていたのだ。プロ入り以来、1770打席連続、ホームランなし……この記録を持っていたのは1リーグ時代、セネタースでプレーしていた横沢七郎。どんな選手なのか、想像もつかない。

 ならば、岡田はどんな選手なのか。

 そう訊かれたら、こう答える。

 岡田は“ホームランを打つに等しい守り”のできる選手だ、と――。

 たとえば8月10日のライオンズ戦で岡田は前方、真後ろ、左中間と、3本の“ヒット”をアウトにしてみせた。とりわけ3回表、炭谷銀仁朗の放ったセンター後方への大飛球をキャッチしたプレーは、伊東勤監督に「岡田が流れを作ってくれた」と言わしめた。岡田がこう話す。

「『岡田なら捕れるかもしれない』と思わせたい」

「バッターのスイング、ピッチャーとのタイミングを見て2、3歩、動きます。この2、3歩で、捕れるかどうかが決まるんです。そのために、1球ごとにバッターのタイミングの取り方、キャッチャーのサイン、フェンスまでの距離、その時の風……すべてを頭に入れて、五感をフルに使って位置取りをします」

 アルフレド・デスパイネが加わり、加藤翔平、角中勝也、DHのサブロー、ファームで打ちまくる清田育宏も控えるマリーンズの外野陣。攻撃力を優先させ、岡田をスタメンから外す試合も増えている。しかし彼の1点を与えない守備力は、ホームランに等しい価値がある。だからこそ、岡田をスタメンから外すべきではないと思う。岡田はこうも言っていた。

「ピッチャーが打ち取ったと思った打球をポテンヒットにしたくないし、やられたと思った打球も『岡田なら捕れるかもしれない』と思わせたいじゃないですか」

 1771打席もホームランを打たなかった岡田がチームに必要とされ続けてきたのは、この守備力があるからだ。もし岡田がアウトにしたヒットの数を数値化できるものならば、とんでもない数の日本記録が生まれているに違いない。

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