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ロッテ岡田、1771打席連続ノーアーチ。
一発への微かな憧れと、貫く“仕事”。 

text by

田口元義

田口元義Genki Taguchi

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photograph byNIKKAN SPORTS

posted2014/08/05 10:30

ロッテ岡田、1771打席連続ノーアーチ。一発への微かな憧れと、貫く“仕事”。<Number Web> photograph by NIKKAN SPORTS

大学中退から社会人を経て、2008年に育成枠でドラフト指名を受けた岡田幸文。プロ初めてのホームランを放った時、彼はどんな表情をするのだろうか。

 その日、QVCマリンフィールドでは、1回裏の攻撃開始前からホームランコールが沸き起こっていた。

 本塁打を打ってほしいが、記録達成の瞬間にも立ち会いたい――。期待と緊張感が入り混じったような、何とも異質な大応援とでも言うべきか。

 7月31日の日本ハム戦。ロッテファンは、1番打者の岡田幸文が打席に立つ意味の深さを十分に理解していた。

 785日ぶりの勝利を賭けてマウンドに上がった斎藤佑樹の外角低めのストレートを、低く、鋭い打球でセンター前に弾き返す。一塁ベースに到達すると、岡田は照れくさそうにライトスタンドの声援に応えた。

 一軍デビューを果たしてから1770打席連続で本塁打ゼロ。

 1リーグ時代の1947年に東急の横沢七郎が残したプロ野球記録に並ぶ打席で放った一打は、岡田にとって自画自賛の打球だった。

「あのセンター前はよかったです。まさに、ああいう打球をいつも心掛けているので」

とにかく塁に出て、足でプレッシャーを与えるのが仕事。

 2打席目も同じ想いで打席に立ったが、新記録は意外な形で樹立された。

 斎藤が投じたストレートは捕手が構えたミットの位置から大きく内角に逸れ、右足太ももに直撃。これには岡田も「予想外でした。よもやの形で新記録達成になっちゃいました」と、素直に喜んでいいのかどうか困惑している様子だった。

 それでも、1打席目の安打を含め、これが岡田の本来の役割なのだ。新記録を達成してもなお、自分のプレースタイルにブレはないと、岡田はきっぱりと言い切る。

「やっぱり『自分の持ち味は何なのか? チームから何を求められているのか?』を考えて野球をすることが一番大事ですよね。僕の場合は、とにかく塁に出る。足で相手にプレッシャーを与え続けてホームに還ることが仕事だと思っているんで」

 1771打席連続本塁打ゼロ。「珍記録」と表現されてしまうこともある。しかし、岡田の野球人生を振り返れば、それが必然のもとに築き上げられた勲章だと認識することができる。

【次ページ】 アマチュア時代から、本塁打とは無縁だった。

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