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騎手とファンを悩ませる、ムチの使用制限と油断騎乗。
~JRAに根付いた競馬観の功罪~ 

text by

片山良三

片山良三Ryozo Katayama

PROFILE

photograph byNIKKAN SPORTS

posted2014/06/29 10:30

湘南ステークスでチェリーヒロインはゴール手前でダローネガにハナ差でかわされ4着に。

湘南ステークスでチェリーヒロインはゴール手前でダローネガにハナ差でかわされ4着に。

 日本の競馬が「パート1国」と認められたのは'07年から。これにより名実ともに念願の競馬先進国の仲間入りを果たしたわけだが、以後、国際競馬統括機関連盟(IFHA)から、「先進国ならこうしてもらわなくちゃ」という難題を数多く押しつけられている。Jpn3と表記して「ジースリー」と読むなどというのがその典型で、国際競走としての実態が認められない重賞競走は、そういう表記を強いられることで、ニッポンだけのローカル重賞であることをより鮮明にさせられているのだ。

 ムチの使用制限も、競馬発祥の地・英国の強い影響で、日本の競馬にもジワジワと浸透してきている。英国では、動物愛護団体との取り決めにより、1レースで一人の騎手が打てるムチは7回までと厳しく制限されている。これについてはジョッキークラブからの反発もあるようだが、大筋を崩すことはできていない。日本の競馬にも回数制限(1レース10回程度)はすでに設けられていると言っても過言ではなく、回数オーバー等(その他にもムチを当てる部位や連打の禁止がある)の違反があると、初期のうちは戒告。それが同一騎手によって繰り返されると過怠金となり、積み重なるごとに金額が増えていく傾向が制裁措置から読み取れる。まだ明文化されてはいないが、近いうちにハッキリとした発表がありそうなムードだ。

「叩き過ぎると怒られるし、追わないともっと怒られる」

 日本の騎手が大変なのは、最後の直線で追う動作を明らかにやめているのがわかると、「油断騎乗」を指摘されて厳罰が科せられることだ。高額の過怠金か、程度によっては問答無用の騎乗停止処分。“公正競馬”を旗印とするニッポンの競馬は、この点においては欧米と比較にならないほど厳しい。「叩き過ぎると怒られるし、追わないともっと怒られる。どうしたらいいの?」というボヤキには、思わず同情してしまいそうになる。

 しかし、騎手の「油断」によって馬券の当たり外れがかわってしまうケースはファンへの影響が大きい。5月11日の東京9レースの湘南ステークスで、横山典弘騎乗のチェリーヒロインがゴール寸前で失速する形で4着に。過怠金10万円の制裁には、サークル内からも「軽すぎるのでは」と異論が出た。よくも悪くも、それが日本に根付いた競馬観なのだ。

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