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夢想することを忘れて
しまったすべての人へ。
~横浜DeNAが編んだ『次の野球』~ 

text by

幅允孝

幅允孝Yoshitaka Haba

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photograph byRyo Suzuki

posted2014/04/22 16:30

夢想することを忘れてしまったすべての人へ。~横浜DeNAが編んだ『次の野球』~<Number Web> photograph by Ryo Suzuki

『次の野球』横浜DeNAベイスターズ著 ポプラ社 1300円+税

 荒唐無稽なアイデア集だと思ったら大間違い。思い出せ。野球とは、夢を見ることができるスポーツではなかったか?

 昨年上梓された『4522敗の記憶』の記憶も新しい横浜DeNAベイスターズ絡みで、またもユニークな本が出た。それは6年ぶりの最下位脱出を祝う内容!ではなく、「次の野球」を夢想するためのアイデア集。既存の枠組みを超え、ベイスターズの野球を今よりもっと楽しくするため、全職員、全選手が一緒になって考えた奇想天外の妙案をご覧あれ。

「ドラフトのくじをファンが引く」、「優勝ビールかけ参加権付きチケット」、「球場にボトルキープ」、「スタジアムドッグラン」。ふざけているのではない。選手もスタッフも、真剣だ。1ページに1つ、北谷彩香のほんわり脱力したイラストを添えて繰り出される「次の野球」千本ノックは、ポテンヒット的にトホホな笑いを誘うものもあれば、場外まで消え、誰も捕球できない特大アーチもあり、読者も安心してページを開けない。

徹底した下から目線の野球革命を本気で目論んでいる。

 そんな中で驚愕したのが、ある男性職員が提出した「布団たたき屋」という案。選手がバットスイングの速さで的確に布団を叩いてくれるサービスらしい。そのリアリティはさておき、こんなアイデア、巨人では絶対に許されないだろう。

 なぜなら、野球選手の権威と尊厳に関わるから。だけど、ベイスターズはそれすらも可能性の一部にカウントした。上からではなく、徹底した下から目線の野球革命を彼らは本気で目論んでいるのだ。この胎動、どこへ向かうのか見届けたい。

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スポーツ新刊紹介

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