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都決勝でハットトリック直後に塾!?
選手権に見る、文武両道の真剣度。 

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茂野聡士

茂野聡士Satoshi Shigeno

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photograph byNIKKAN SPORTS

posted2013/12/29 08:01

都決勝でハットトリック直後に塾!?選手権に見る、文武両道の真剣度。<Number Web> photograph by NIKKAN SPORTS

雪で決勝戦が延期になった、前回の高校サッカー選手権。決勝が行なえたことは幸いだったが、文武両道が問われる事件でもあった。

 2013年1月14日、高校サッカーの頂点を決める舞台・国立競技場は一面の雪景色に包まれていた。

 首都圏を襲った大雪によって国立のピッチは試合を行なえるコンディションになく、試合は中止となり、両校優勝の措置も検討された。

 プロのリーグ戦ならば、試合を延期することで日程を調整することができる。しかし学生スポーツ大会である全国高校サッカー選手権は、おいそれと決めることはできなかった。

 全国大学ラグビー選手権決勝などのスポーツイベントが予定されていた国立。空いている日は次の土曜日、19日だけだった。だがその日は、なんと大学入試センター試験の初日。

 結局は決勝に進出した鵬翔(宮崎)、京都橘(京都)の登録選手にセンター試験の受験者が1人もいなかったため、19日に決勝戦が延期され、鵬翔が初優勝を飾った。

 もし、再び国立が荒天に見舞われて試合開催が厳しい状況となったら、どう対処するのだろうか――。

 ある高校の試合を取材に訪れた際にふと考えたことである。

選手権出場を決めた、国学院久我山・松村のハットトリック。

 11月16日、味の素フィールド西が丘。

 この日、高校選手権の東京都代表2校を決めるA・Bブロック予選の決勝戦が行なわれていた。そのBブロック予選を制し、2年ぶり5度目の全国切符を手に入れたのが国学院久我山高校。

 過去に丸山祐市(FC東京)、田邉草民(スペイン・サバデル)らを輩出した国学院久我山。李済華監督率いるチームは最終ラインからの組み立てを意識しつつ、個人技術とコンビネーションで小気味よく相手守備陣を崩す。“セクシー・フットボール”の名でお馴染みになった野洲(滋賀)などとも共通する果敢なスタイルである。

 そのサッカースタイルとともに目を引くのが、学業との両立を打ち出している点だ。

 平成25年度の同校は、東大や東工大などを含めた国公立大の現役合格者が50人、東京六大学や上智・東京理科大などの有名私立大学にも軒並み2桁の合格者をマークしている。

 そんな高校のサッカースタイル、そして「文武両道」を象徴するような存在が、小柄なアタッカー・松村遼だった。

 Bブロック決勝戦の序盤、国学院久我山は対戦相手・駒澤大高のハイプレスの前に、いつものパスワークを発揮できなかった。

 しかしリズムを掴めない状況の中でも、松村が前半14分に目の覚めるようなミドルシュートを叩き込んで先制する。その後も、国学院久我山は駒沢大高の徹底したハイボールへの対応に苦しみ、本来のプレーからは程遠い出来だった。それでも松村は27分、後半33分と三度ゴールネットを揺らしてハットトリックを達成。4-0の勝利に大きく貢献した。

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