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妖精の可憐さと、雑草魂の根性娘。
今井遥、逆転のソチへ完璧を期す。
text by
野口美惠Yoshie Noguchi
photograph byAFLO
posted2013/12/12 16:30
復調の手応えを感じながら、ロシア杯では9位。浅田、鈴木、村上の上位陣を逆転してのソチ行きには、全日本で周囲をあっと言わせる演技が必要だ。
華奢な身体と見た目の可憐さから、“氷上の妖精”と謳われることもある。しかし、その素顔は、雑草のような根性娘。
最初に注目を集めたのは'08年全日本ジュニア選手権だった。力を使わずに3回転ジャンプを軽々と決める15歳の無名選手。日本のスケート関係者が「日本女子の次世代を担う卵」と色めきたったのも無理はない。スケート開始が7歳と遅く、無類の成長スピードだったのだ。
急成長のきっかけは、前年の全日本ジュニアで7位に入賞し強化選手に選ばれたこと。'08年夏に野辺山で行われたジュニア強化合宿に参加した。
「同じ歳の子がルッツやフリップなど難しいジャンプを跳んでいるのでびっくりしました」
もともと他人と自分を比較することのない性格。難しいジャンプはシニアがやるものと思い込み、同年代の選手が何を練習しているのか興味を持ったことすらなかった。わずか1週間程度の合宿で、難度の高いルッツやフリップに初挑戦すると、
「跳んでみたら跳べちゃったんです」
アメリカでは、練習中に他の選手が拍手する。
開花した才能を武器に、このシーズンはルッツまでのジャンプを成功させて一気に全日本ジュニアで優勝した。身体の使い方が柔らかく、優雅なオーラも魅力的だった。
'09-'10年は四大陸選手権5位、翌季も冬季アジア2位と着実に成績を出すと、'11年夏、より良い練習環境を求めて、佐藤有香が指導するデトロイトへと渡った。
「アメリカでは、ジャンプを成功すると滑っていた選手皆が拍手するんです。最初は驚いたけど、ライバルでもお互いを認め合うみたいなアットホームな雰囲気でした」
リンクは3面あり、いつでも滑ることができる。スケーティングに定評がある有香コーチの指導のもと、基礎を徹底的に見直した。
「有香さんから、カーブに乗りきれいな円を描く、ということを教わりました。円に乗って深く(倒した)エッジを使うと、綺麗な滑りでスピードも出る。びっくりするくらい私のスケートは変わりました」