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<アフリカ最強国、新指揮官との歩み> コートジボワール 「ドログバを本気にさせた男」 

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マーク・グリーソン

マーク・グリーソンMark Gleeson

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photograph byGetty Images

posted2013/12/13 06:01

<アフリカ最強国、新指揮官との歩み> コートジボワール 「ドログバを本気にさせた男」<Number Web> photograph by Getty Images
アフリカ屈指の「個の力」が居並ぶものの、主要大会となると
結束力が及ばず勝ち切れない。しかし今、指導経験のなかった
一人の青年監督が、黄金世代と共に新たな歴史を刻もうとしている。

12月6日に行われたW杯抽選会で、日本と同組になったコートジボワール。
ドログバ、トゥーレ兄弟らを擁する「エレファンツ」の今を追った
Number842号のレポートに大幅加筆して特別に全文公開します!

 ディディエ・ドログバ、ディディエ・ゾコラ、トゥーレ兄弟ら、アフリカ史上屈指の陣容を揃えながら、いまだ無冠のコートジボワール黄金世代。悲願のW杯上位進出を果たすべく、ラストチャンスに臨む猛獣たちの手綱捌きを任されたのは、指導経験を持たない元フランス代表MFだった――。

 サブリ・ラムシはこの18カ月間、ほとんど笑顔を見せることがなかった。ピッチサイドで仏頂面を崩さず、腕を組んで神経質に思考を巡らせる。これが彼の最近のパブリックイメージだ。現役時代はその整った顔に、リラックスした表情をよく浮かべていたというのに。

中田英寿の元同僚でザックの薫陶を受けた男・ラムシ。

 しかし、11月16日の冷えきったカサブランカの夜、この日ばかりは満面の笑みで周囲の人々と抱擁を交わすラムシの姿があった。このチュニジア系フランス人監督の指揮するコートジボワールが、セネガルとのプレーオフを制して、3大会連続のW杯出場を決めたのである。最終スコアは2試合合計4-2(第1戦は3-1)。だが実際はそれほど楽な戦いではなく、第2戦の72分にPKで先制を許してから終了間際にサロモン・カルーが同点ゴールを決めるまでは、次の失点で地獄へ転落する恐怖があった。

「セネガルは予想通り、死に物狂いで向かってきた。特に後半は苦戦を強いられ、我々は3本の短いパスをつなぐことすら難しくなっていた。本当に厳しい戦いだったよ」と振り返ったラムシは、この試合だけでなく、ここに至るタフな道のりを思い出していたのだろう。

「率直に言って、この1年半は苦難の連続だった。でも今はとても誇らしい気分だ」

 '90年代に母国フランスで頭角を現したラムシは、その後イタリアに渡り、パルマで中田英寿らと共にコッパ・イタリアを制し、インテルではアルベルト・ザッケローニの指導を受けた。'05-'06シーズンのマルセイユを最後に欧州を離れ、晩年はカタールで過ごし、'09年に現役引退を表明。以降は解説者として活躍していたが、'12年5月、3カ月前のアフリカ・ネーションズカップ(CAN)決勝でザンビアにPK戦で敗れたコートジボワールのフランソワ・ザウイ監督が任を解かれると、後任に指名される。当時40歳のラムシはプロの指導経験を持っておらず、抜擢は大きな驚きをもって伝えられた。

【次ページ】 就任後の6試合は4勝2分けと結果を出したが……。

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