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<登山中のエネルギー源> 伝統の山メシ考 ~山岳部、ワンゲル部を試食取材~ 

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photograph byKatsumi Sakaguchi

posted2013/08/29 06:00

<登山中のエネルギー源> 伝統の山メシ考 ~山岳部、ワンゲル部を試食取材~<Number Web> photograph by Katsumi Sakaguchi
カロリーが高くて便利で軽くて美味しくて。山の食事に求められる条件は多い。
山登りを愛する若者たちは、代々、伝わる伝統の味を大切にしつつ、
理想のレシピを求めて日夜工夫を重ねていた。
こだわりのレシピを通して、山メシの奥深い世界をのぞいてみよう。

好評発売中の雑誌Number Do『日本百名山を再発見~あの山はもっと遊べる!~』では、山登りの楽しみ方を様々な角度から切り込んでいます。
今回は高校や大学の山岳部、ワンゲル部の秘伝メニューを公開します!

 まずは山登りの本場、信州大学を訪ねた。信大といえば北アルプスのお膝元。山に登るために信大を目指す学生もいるといわれるほどだ。同大ワンゲル部も部員19名と盛況で、ここ数年増加傾向にあるという。夏山がメインだけに、「山メシ」のメニューも多彩だが、中でも名作の誉れ高いのが写真の3点(以下、編集部の評価)。

悟パスタ……オイルサーディンの油がパスタとうまく絡まっている。★★★
慎平飯……鰻が存在しない鰻丼。焼き鳥との相性もいいが、焦げやすいのが難点か。★
博一カレー……じゃがりこが「とろみ」と「イモ感」を見事に再現している。★★★

 新メニューは部室で考案し、事前に試食してから実地で作るが、レギュラー化するのは希だ。見事「殿堂入り」した料理には考案した部員の名前が冠せられる。現在、検討されている新作が「しろうパスタ」。茹でたパスタに、永谷園のお吸い物の粉末と梅チューブを加えて味を調えるというもので、なるほど、さっぱりとうまそうだ。

「鍋を洗ったお湯を全部飲み干すのが習わしなんです」

【写真左上】 悟(さとる)パスタ
【写真右上】 慎平飯(しんぺいめし)
【写真下】 博一(ひろかず)カレー  

 調理は3年生と1年生が担当する。先輩から後輩へ調理技術が伝授されていくという仕組みである。しかし伝授されるのはそれだけではない。

「鍋を洗ったお湯を全部飲み干すのが習わしなんです。僕たちは『さらい』って呼んでるんですけど」(高橋大貴代表・3年)

 生活排水は山に捨ててはいけない。そこですべて飲み干すわけだ。「さらい」は1、2年生に課せられた義務だが、誰も「可哀想だから止めよう」とは言わない。なぜなら、「僕、もう3年生なんで(←つまり自分は飲まなくていい)」

 せっかくのオリジナルレシピも台無し(?)のこの悪しき慣習は、調理のノウハウとともに、漏れなく受け継がれていくのであった。

 意外とうまいものを食っていた信大だが、さらに本格的なグルメを追求して、日夜、研究を続けているのが東京農大山岳部である。なにしろ焼き肉をするために鉄板を担ぎ上げ、山頂でトンカツを揚げるほどのコダワリぶりなのだ。

「(他大学から)ほとんど変人扱いされてます」(渡邉葉月部長・4年)

 自他共に認める「山メシグルメ」の農大。そのヒミツは独自の「フリーズドライ食品」にあるという。

【次ページ】 東農大ならではの技術で食材をフリーズドライ!

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