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石川遼が2年ぶりの
勝利で確信したこと。
~不振を抜け出し、見つけた自分~ 

text by

三田村昌鳳

三田村昌鳳Shoho Mitamura

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photograph byKYODO

posted2012/11/23 08:00

石川遼が2年ぶりの勝利で確信したこと。~不振を抜け出し、見つけた自分~<Number Web> photograph by KYODO

21歳1カ月25日での通算10勝目は、史上最年少。賞金ランクも26位から8位に急浮上した。

「実感……。ウィニングパットを入れたときは、ほとんどなかったですね。でも、わずか10cmの距離で手が震えた感じとかは、今まで経験がない。それくらい難しいパットだった」

 三井住友VISA太平洋マスターズで、石川遼が71戦、728日ぶりの復活優勝を果たした。

 2010年の同大会で優勝して以来、実に2年間にわたって勝利から見放されていたことになる。

 石川の不振に呼応するかのように、日本男子ツアーの視聴率やギャラリー数も下降気味となっていた。それが、余計に石川にプレッシャーを与えていたのではないだろうか。

「そういうことを自分が思っている余裕は、この2年間はなかったですね。自分とか(松山)英樹がというわけでもないですが、1人、2人の選手に、ツアー全体が頼る形は健全ではないと思います。日本のツアーの選手がメジャーで活躍していくためには、少数の選手が頑張っているだけじゃダメ。みんなでツアー全体のレベルを上げていく意識がないと」

「勝ってみて分かったんですけど、足りないものは“無い”んです」

 今回の優勝で思い出したのは、今年4月のマスターズで石川が予選落ちしたときのことだ。

 メディアの囲み取材が終わったあと、彼と少し立ち話をした。

「いま、なに考えてゴルフしているの?」

 と聞くと、彼は一瞬、不思議な顔をした。すかさず話を続けた。

「ゲーム中、戦っているにもかかわらず、自分では、足りない、足りないって思っているんじゃない? 1打ごとに、自分の足りない部分しか脳裏を過ぎらない。それじゃだめだと思うんだ。いまある自分の技量は、自分なりに満ち溢れていると思ってプレーしないと……」

 彼は、姿勢を真っ直ぐに正した後「ありがとうございます」と応えた。

 あれから7カ月。

 ウィニングパットを入れた後、涙を流した彼は、優勝インタビューで次のように語った。

「(勝つために)足りない部分は何ですかという質問をされたことはありました。勝ってみて分かったんですけど、(足りないものは)“無い”と思います」

 その答えを聞いて、石川遼がようやく2年間の苦悩から抜け出せたと思った。

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