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マンUと香川真司の冒険は続く――。
“ダイヤモンド型の中盤”という革命。  

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ミムラユウスケ

ミムラユウスケYusuke Mimura

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photograph byAP/AFLO

posted2012/10/24 12:40

マンUと香川真司の冒険は続く――。“ダイヤモンド型の中盤”という革命。 <Number Web> photograph by AP/AFLO

前半28分にスライディングで左膝を負傷した香川だが、その後も攻守にわたって果敢なプレーを披露。自ら交代を申し出ることなく、前半最後までピッチに立った。

 ひょっとしたら、この試合はマンチェスター・ユナイテッドの新たな歴史の扉を開けることになっていたのかもしれない。

 その役割を担うのが、クレバリーと香川真司だった。2人は、中盤をダイヤモンド型にした4-4-2のフォーメーションで、それぞれ右のセンターMFと、左のセンターMFとして起用された。

 試合前、ファーガソン監督はこう話している。

「ダイヤモンド型の中盤を試すことは我々にとって革新的な試みだ。伝統的なワイド型のフォーメーション(4-2-3-1や中盤をBOX型にした4-4-2)と、ダイヤモンド型のフォーメーションを使い分けられれば、相手は対策を立てにくくなる。それは、大きな強みを持つことにもつながる。香川やクレバリーのような選手はダイヤモンド型が求められた時に本当に良いプレーをすることが出来るのだ」

「香川を獲得したもともとの理由は、ストライカーの背後でプレーできる能力があったから」だと明かした監督は、さらにこう続けている。

「最近の数試合で香川は中盤の右サイドでプレーしていたが、問題なくこなした。中央でプレーするのと同じように(チャンスを)作る能力を持っているからだ。ダイヤモンド型の中盤でプレーしたとしても問題はない」

香川のポジションは左MFではなく、あくまでもセンターMF。

 この日の香川のポジションは、フォーメーション図では左MFと表記されるかもしれないが、実質はサイドのMFとは全く異なっていた。ユナイテッドに加入するよりも前に「スピードがあって、パワーがあって、突破力があって、ビッグクラブにいるサイドの選手は強烈だなと思いますし、そこで戦えるかと言ったら、なかなか難しい」と香川は話していたが、この試合での香川のポジションは、そうしたサイドのMF像とも異なる。ダイヤモンド型の中盤の左サイドを担ってはいるが、あくまでも、センターMFなのだ。

 中盤をダイヤモンド型にしたフォーメーションが、どうしてユナイテッドの歴史の扉を開くのか。ファーガソン監督はこんなコメントで説明している。

「クラブの歴史においては、ワイドの選手とともにプレーしてきた。もしも、我々がコンスタントにダイヤモンド型の中盤でプレーすることになったら、それは革命的だろうね。それは、我々の過去の歴史に反するからだ」

 香川に対して、ファーガソン監督は試合前にこう指示している。

「どんどん攻撃に絡んで、中に入ったりしながらプレーしろ」

 香川自身は、その指示に加えて、こうも考えていた。攻撃の起点を作ろう。守備でもチームに貢献しよう。

 マンチェスターの時刻が19時45分となったとき、欧州チャンピオンズリーグ・グループHの第3節、マンチェスター・ユナイテッドがブラガ(ポルトガル)をホームに迎えた一戦が幕を開けた。

【次ページ】 香川のアシストから反撃ののろしをあげるユナイテッド。

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