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若き天才トラウトと苦労人トランボ。
好調エンゼルスを牽引する“光と影”。 

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菊地慶剛

菊地慶剛Yoshitaka Kikuchi

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photograph byGetty Images

posted2012/08/08 10:30

若き天才トラウトと苦労人トランボ。好調エンゼルスを牽引する“光と影”。<Number Web> photograph by Getty Images

弱冠20歳でメジャーのスタメン定着を果たし、新人王候補となっているマイク・トラウト(写真左)。一方、マーク・トランボ(26歳)は、マイナーを経験し、およそ6年かけてようやくメジャーの舞台に。お互いが刺激し合い、チームの好調を支えている。

「おい……見てるか谷沢……お前を超える逸材がここにいるのだ……!! それも……2人も同時にだ……谷沢……」

 唐突ではあるが、この言葉を聞いてピンと来た方も少なくないはずだ。漫画『スラムダンク』の中で、湘北高校バスケットボール部の安西監督が1年生コンビの流川楓、桜木花道の才能に身震いし、不慮の事故死を遂げた教え子である谷沢に向け発した、心の叫びである。

 谷沢はともかくとして、こんな安西監督の心境にさせられてしまうのが今シーズンのエンゼルスだろう。というのも、とんでもない“逸材”が2人同時に開花したのだ。

 表舞台に登場するやいなや、チームを牽引する活躍を続け、すでにスター選手のオーラすら漂う、流川楓的存在がマイク・トラウト選手だ。

 すでにこのコラムで紹介しているが、その後も破竹の勢いは留まることを知らない。現在も打率、盗塁の2部門でア・リーグの首位を走り、現在メディアの間では新人賞はおろか、2001年イチロー選手以来のMVPとのダブル受賞を期待する声も上がっているほどだ。

メジャー随一の飛距離を誇るトランボのパワーは規格外。

 そして今回紹介したいのが、もう1人の逸材であり、トラウトの活躍の陰に隠れながらも、今やエンゼルスの主砲にまで成長した、桜木花道もかくやというパワーを誇るマーク・トランボ選手だ。

 トラウトとともにオールスター戦に初選出されているように、今シーズン目覚ましい活躍をしている。

 そんな彼の知名度を全国区に引き上げたのは、オールスター戦のホームラン競争だった。残念ながら優勝こそ逃したものの、カウフマン・スタジアムの左翼席後方の建物の屋根を直撃する本塁打を放つなど、その飛距離に誰もが度肝を抜かれてしまった。

 ホームラン競争の時も紹介されていたのだが、今シーズン前半戦までのトランボの本塁打平均飛距離は約127.9メートルでメジャー1位。ホームラン競争でも最長距離139.3メートルを記録。“より遠くにボールを飛ばす”というファンの憧れをまさに体現してくれている選手なのだ。

【次ページ】 「岩を砕くように叩き、爆弾のように遠くに運ぶ」

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