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関塚ジャパンが、完璧な作戦勝ち!
「スペインに勝ったのは奇跡じゃない」 

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佐藤俊

佐藤俊Shun Sato

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photograph byRyosuke Menju/JMPA

posted2012/07/27 11:35

関塚ジャパンが、完璧な作戦勝ち!「スペインに勝ったのは奇跡じゃない」<Number Web> photograph by Ryosuke Menju/JMPA

大津の先制ゴールで歓喜に沸く選手たち。「自分たちの色をもっと出せるし、もっともっと激しくいける。(ピッチ上で戦う)11人だけじゃなく、18人全員で頑張って、1次リーグ突破を決めたい」と試合後に語ったキャプテンの吉田。

 4分もの長いロスタイムが終わりを告げた時、大津祐樹は両手を合わせ、涙した。

 永井謙佑は、腰を折り、ほとんど立っていられない状態だった。

 東慶悟は、腰を落としてピッチにへたり込んでしまった。

 90分間、日本は必死に走り続け、スペインを1-0で打ち破ったのである。

 試合前、日本の圧倒的な劣勢が伝えられる中、なぜ日本は勝てたのか――。

 スペイン戦前日、永井と昨季のクラシコの話をしていた。レアル・マドリーがチーム全体で守りつつ、カウンターでバルセロナを破った試合だ。それを永井はずっと見ていたといい、「スペイン相手には、ああいうサッカーが一番しっくりくると思う」と熱く語っていたのだ。つまり……今回の勝利は堅守速攻という関塚ジャパンが周到に準備した「戦い方」が、スペイン相手に完全にハマったからこそ得られたものなのだ。

 日本のスタイルは、トゥーロン国際大会の惨敗で変化した。

 世界相手に自分たちがポゼッションするのは難しい。そのため、まずは「守備から入る」ということを徹底した。それまでは試合の入り方が不安定で早い時間帯によく失点していたのだが、やがて安定して試合に入れるようになっていった。

メキシコ戦で確信した……自分たちの戦い方が間違っていないことを。

 この戦い方に確信を持てたのが、メキシコ戦だった。

 前半の長い時間、全員で守って耐えた。この時の守備のやり方が、スペイン戦を戦うためのひとつのヒントになったのである。3ラインを敷いてトップから積極的にボールへとアプローチする。守備の連動も、OA枠で入った徳永悠平や吉田麻也が積極的に声を掛けていくことで、前でボールを取りに行く時、我慢する時のメリハリを付けられるようになった。

 スペイン戦は、相手に支配される時間が長くなると予想され、選手個人の技術も日本より高いことが分かっていた。そのため、相手に食い付かず、流しながら守備をした。

「相手が嫌がっていたのが分かった」と酒井宏樹が言うように、スペインのために用意した守備シフトは見事に機能した。「相手にボールを持たれても、自分たちは守備のリズムが良かったんで、それほど恐さは感じなかったです」と扇原貴宏が言うように、守備自体は試合を通じて非常に安定していた。

【次ページ】 大津の先制点で、より一層カウンターの意識が徹底した。

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