オリンピックへの道BACK NUMBER
世界選手権連覇の浅見が初戦敗退。
それでも公平な柔道五輪代表の選考。
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byJun Tsukida/AFLO SPORT
posted2012/05/16 10:31
柔道ロンドン五輪代表が体重別選手権の最終日に勢揃い。下段左端から福見友子、中村美里、松本薫、上野順恵、田知本遥、緒方亜香里、杉本美香。上段左から平岡拓晃、海老沼匡、中矢力、中井貴裕、西山将士、穴井隆将、川上大樹。全14人で、このうち五輪初出場が12人に上るなどフレッシュな顔ぶれとなった。
5月12・13日、柔道のロンドン五輪代表最終選考会、全日本選抜体重別選手権が福岡国際センターで行なわれた。
もっとも注目を集めたのは、女子の軽量級の代表争いだった。48kg級は2009年の世界選手権覇者、世界ランク1位の福見友子、'10、'11年世界選手権優勝、2位の浅見八瑠奈。52kg級は10年世界選手権優勝、世界ランク1位の西田優香と'09、'11年世界選手権優勝、2位の中村美里。「誰が出ても金メダル」と言われるほどの屈指の実力者がそろうのが両階級だからだ。
ところが、48kg級は予想外の展開を見せた。
世界選手権で連覇した浅見が1回戦で敗れ、対する福見は順当に決勝に勝ちあがり、決勝でも浅見を破った岡本理帆に判定勝ちし優勝したのだ。
浅見が初めて経験した、たったひとつの椅子を争う重圧。
両者の明暗を分けたのは、メンタルだった。
浅見は、「1週間前から寝付けませんでした」と言う。選考会のプレッシャーからだった。
世界選手権をはじめ、数々の国際大会や国内の選考大会などを経てきた浅見だが、ただひとつ、経験していなかったことがある。「唯一の代表を決める選考会」である。
柔道は、'10年の世界選手権から、代表を1カ国あたり各階級2名にした。
浅見が本格的に代表を争う選手に成長したのは、その'10年からだ。2枠を争うのと、1枠を争うのでは、重圧は異なる。
福見は、例えば'09年、代表争いを繰り広げていた山岸絵美との対決を制して代表になるなど、その重さを知っている。
これまでの数々の経験も含め、そうした選考会の重さがどこまで身にしみているか、そこに2人の差が生まれたのではないか。