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テキサス・レンジャーズ 「史上最年少GM、ジョン・ダニエルズの挑戦」 

text by

出村義和

出村義和Yoshikazu Demura

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photograph byYukihito Taguchi

posted2012/02/01 06:01

テキサス・レンジャーズ 「史上最年少GM、ジョン・ダニエルズの挑戦」<Number Web> photograph by Yukihito Taguchi
低迷を続けるチームの陣頭指揮を任された28歳の男は、
短期間でいかに戦力を充実させ、WSへと導いたのか。
ダルビッシュ有をも獲得した、若きGMの手腕と野望を探る。

 レンジャーズの大躍進によって、メジャーリーグの勢力地図が塗り替えられようとしている。昨シーズンは球史に残る大熱戦の末に力尽き、球団初のワールドシリーズ優勝は目前で逃したものの、ア・リーグ連覇は’01年にヤンキースが4連覇を果たして以来の快挙だ。

Jon Daniels
1977年8月24日、ニューヨーク州クイーンズ生まれ。コーネル大卒。レンジャーズの編成部長、GM補佐を経て、'05年10月にMLB史上最年少でGMに就任。'10年には創設50年目で初のリーグ優勝に導く

 近年のメジャーは、全米スポーツ界最大のライバル関係にあるといわれるヤンキースとレッドソックスを中心に展開されてきたといっても過言ではない。また、ナ・リーグでも東地区に所属するフィリーズが黄金期の真っ只中にいることもあって、メジャーの勢力分布は“東高西低”の傾向が著しかった。

 そうした状況の中、レンジャーズの存在感が近年、急激に増してきた。強豪にのし上がっただけでなく、今オフはダルビッシュ有の激しい争奪戦に参戦し、史上最高の入札額で落札。貪欲な戦力強化の姿勢をアピールした。

 そのチームの陣頭指揮を執っているのが'05年10月、メジャー史上最年少の28歳と41日でGMに就任したジョン・ダニエルズである。プロでの選手経験もなく、球団フロントとしての実績も乏しかった若きGMはしかし、わずか6年余で球界に影響力を及ぼすスターGMにのし上がり、いまやチームとともに、メジャーの頂点に上り詰めようとしている――。

打撃面に力を入れた補強が失敗し、低迷期が続いたレンジャーズ。

 壇上のダニエルズはいつも通りのポーカーフェイスを崩すことはなかったが、その口調からは断固たる自信が感じ取れた。昨年のワールドシリーズ第6戦前に行なわれた記者会見でのことだ。

「我々のチームはしっかりとした土台が出来上がっている。それはフィールド上だけではなく、球団組織全体についてもいえる。次に必要なのは、ファーム組織から昇格してくる若手選手のウェーブだ」

 それはまるで、黄金時代到来を予言しているようにも聞こえた。このチームでは、彼がGMに就任する以前には想像もつかなかったようなことが起ころうとしているのだ。

 かつてレンジャーズといえば「強打のチーム」というのが一般的なイメージだった。実際、'90年代の後半に3度達成した地区優勝は、いずれもホアン・ゴンザレスら強打者を並べて打ち勝ってきたものだ。その後もレンジャーズは、'01年にアレックス・ロドリゲスを史上最高額の10年2億5200万ドルで獲得するなど、ヒッターズパーク(打者に有利な球場)といわれる本拠地球場に合わせて、打撃面に力を入れた補強を続けてきた。

 しかし、そうした方針は実を結ばず、逆に超大物を迎えたことによってチーム内のバランスがますます崩れ、'01年も前年に続いて最下位に沈む。そのテコ入れとしてインディアンスで'90年代の黄金期を築いたジョン・ハートをGMに据えたが、名GMらしからぬ補強の失敗もあって低迷期は続いた。ハートは「力が及ばなかった」と言って、4シーズン目の終了直後、自らチームを去った。

 そこで白羽の矢が立ったのが、ハートのもとでGM補佐を務めていたダニエルズだった。

【次ページ】 当時のオーナーがダニエルズを大抜擢した理由。

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